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第六章・5
涼雅の言った通り、お昼から午後にかけて客が入ってくるようになった。
「新しく店が入ったんだなぁ、って思って」
「前の店、急に閉まっちゃったんだよね」
「二人でやってるの? 頑張ってね」
こんな言葉とともに、入っては出ていく客たち。
その一人ひとりに、翠は明るくあいさつをしていた。
「いらっしゃいませ!」
そんな彼が腕を振るう、ハーブティー。
爽やかなミントティーが、客を喜ばせた。
「ハーブティーって、色のついたお湯、ってイメージがあったんだけど、これは美味しいね」
「ありがとうございます!」
「ちゃんと、フレッシュな味わいがあるんだなぁ」
「光栄です!」
そんな翠の姿に、涼雅も嬉しかった。
(この調子で、翠さまが生きがいを感じてくだされば)
「涼雅さん、働くって楽しいです!」
「困ったお客様がいらっしゃれば、すぐにわたくしにおっしゃってくださいね?」
困るだなんて、と翠は晴れやかな笑顔だ。
「皆さん、すごく優しくしてくださいます!」
そうだといいが、愛らしい彼に、よからぬ色気を押し付ける客がいないとも限らない。
すっかり店の看板になった翠だったが、涼雅はそんな気を揉んでいた。
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