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第七章・2

「ねえ、涼雅さん。これが、生きがい、ってものなのかな」  以前は屋敷で、父に何かと兄たちと比べられて育った翠だ。  認められ、褒められることなど一度もなかった。 「僕、初めてこんなにワクワクしてる気がする。初めて、毎日が充実してる気がするんです」 「翠さま……」  そこへ、スタッフの青海(あおみ)がやって来た。 「お話し中、すみません。翠さま、カモミールティー二つ、お願いします」 「あ、うん。解ったよ」  青海は、第二性がオメガの大学生だ。  明朗で気が利く性質だったので、涼雅がアルバイトとして採用した。  同年代ということもあり、翠の友達になってくれれば、との願いもあった。  幸い青海は友好的な性格でもあったので、翠ともすぐに打ち解けた。  彼を『翠さま』と呼ぶのも、敬愛というより親愛の表れだ。  涼雅がそう呼ぶので、青海も翠をそう呼んでいた。  翠がお茶を淹れる間、青海はこそりと話しかけた。 「ね、翠さま。さっきは能登さんと、何話してたの?」 「え? うん。生きがいについて」 「哲学だなぁ。もっと良い話してたのかと思ったのに」 「良い話?」 「恋バナ、とか!」  え、と翠は手を止めた。  な、なぜ、かな?  どうして、僕と涼雅さんが、恋の話を!?  焦る翠に、青海は囁いた。 「どこまで行ってるの? キスとか、した?」  キ、キス!?  翠は茶器を取り落としそうになった。

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