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第八章・4
「翠さま。どうかなさいましたか?」
「え?」
「何か、考え事でもなさっておいでですか」
手にしたカップの紅茶が、どんどん冷めていっている。
いつしか翠は、涼雅を見たまま動きを止めてしまっていた。
あまりにも、彼のことを想い過ぎて。
「な、何でもないよ」
その場は取り繕ったが、湧きだす想いは抑えられなかった。
(僕、涼雅さんとキスしたい、って考えてる!)
耳まで熱くなってきた。
しかし、認めてしまえば決心もつく。
(キス、って。どうすれば、できるんだろう)
何か、きっかけがいるのかな。
僕から言うのは、恥ずかしいな。
それに、断られたらどうしよう。
朝食の卓の上は、そんな翠の想いですっかり散らかっていた。
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