50 / 140

第八章・4

「翠さま。どうかなさいましたか?」 「え?」 「何か、考え事でもなさっておいでですか」  手にしたカップの紅茶が、どんどん冷めていっている。  いつしか翠は、涼雅を見たまま動きを止めてしまっていた。  あまりにも、彼のことを想い過ぎて。 「な、何でもないよ」  その場は取り繕ったが、湧きだす想いは抑えられなかった。 (僕、涼雅さんとキスしたい、って考えてる!)  耳まで熱くなってきた。  しかし、認めてしまえば決心もつく。 (キス、って。どうすれば、できるんだろう)  何か、きっかけがいるのかな。  僕から言うのは、恥ずかしいな。  それに、断られたらどうしよう。  朝食の卓の上は、そんな翠の想いですっかり散らかっていた。

ともだちにシェアしよう!