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第八章・6

 では、おやすみなさいませ。  隣に横になった涼雅が、掛布を翠の肩まで上げた。   『涼雅、いつもありがとう。僕からのお礼、受け取ってくれるかな』  そんなセリフまで用意していたというのに、時だけがいたずらに過ぎて、もう眠る時刻だ。 (このままじゃ、ダメだ。勇気を出すんだ、僕!) 「どうかなさいましたか?」 「うん。あの、ね。涼雅さんに、伝えたいことがあるんだよ」 「何でございましょう」 「う、受け取って欲しいんだ。僕の、お礼」  お礼、とは。  涼雅は、慈愛に満ちた表情だ。 「わたくしは、翠さまからお礼をいただくようなことは、何も」 「でも、いつもお世話になってるし」 「それが、わたくしの喜びですから」  翠さまが心地よく過ごしていただけるよう配慮することが、わたくしの喜び。  どこまでも謙虚な、涼雅だ。  翠は、もどかしくなってきた。

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