63 / 140

第十章 少しずつ前へ

 バスルームの中、堂々としているのは翠の方だった。  涼雅はタオルで前を隠し、ただ恐縮して隅に立っていた。 「涼雅も来て。一緒に、シャワーを浴びようよ」 「翠さま。少々、はしたのうございますよ」  それでも、この若き主人に命じられれば、従わざるを得ない。  涼雅は、シャボンで泡だらけになった翠を、シャワーの湯で流した。 「ふふっ。くすぐったいな」  涼雅も、洗ってあげる!  そう言うと、翠はボディソープをスポンジに泡立てて、涼雅をこすり始めた。 「いえ、あの! 翠さま、もったいない!」 「いいから、いいから」  しかし、さすがにその内股に手を伸ばしかけた時、翠はためらった。 「翠さま、大丈夫でございますか?」  有島に乱暴されたことを、思い出したのかもしれない。  そう、涼雅は危惧した。  だがしかし。 「……涼雅の、って。どんな形してるの?」 「え!?」 「見せて」 「いや、それは、その!?」  まさか、翠が性器に興味を持つとは思わなかった、涼雅だ。  少々、いや、かなり焦った。

ともだちにシェアしよう!