64 / 140
第十章・2
「特段、変わったものではございませんよ。普通です」
「普通」
「そうです。普通です」
翠は、ふざけているように見えて、真剣に自分と戦っていた。
脳裏には、自らのペニスを見せびらかすように示してみせた、有島の姿が思い出されているのだ。
(負けちゃ、ダメだ。涼雅に、助けてもらえば、乗り越えられるはず!)
「見せて、涼雅。お願いだから」
そのまなざしに、涼雅はようやく翠の気持ちをくみ取った。
(翠さまには、何か理由がおありなのだ)
おそらくそれは、辛い事件を乗り越えるためのもの。
「わたくしのものでよろしければ、お見せいたします」
「うん」
涼雅は、そっと腰に当てていたタオルを解いた。
「……わぁ。僕のと、全然違う」
「恥ずかしゅうございますよ、翠さま」
そして、有島さまのものとも、違うみたい。
彼のものより大きく太く、ぞくりと来るのに、嫌悪感はない。
それはただ静かで大人しく、攻撃的には見えなかった。
ともだちにシェアしよう!