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第十章・2

「特段、変わったものではございませんよ。普通です」 「普通」 「そうです。普通です」  翠は、ふざけているように見えて、真剣に自分と戦っていた。  脳裏には、自らのペニスを見せびらかすように示してみせた、有島の姿が思い出されているのだ。 (負けちゃ、ダメだ。涼雅に、助けてもらえば、乗り越えられるはず!) 「見せて、涼雅。お願いだから」  そのまなざしに、涼雅はようやく翠の気持ちをくみ取った。 (翠さまには、何か理由がおありなのだ)  おそらくそれは、辛い事件を乗り越えるためのもの。 「わたくしのものでよろしければ、お見せいたします」 「うん」  涼雅は、そっと腰に当てていたタオルを解いた。 「……わぁ。僕のと、全然違う」 「恥ずかしゅうございますよ、翠さま」  そして、有島さまのものとも、違うみたい。  彼のものより大きく太く、ぞくりと来るのに、嫌悪感はない。  それはただ静かで大人しく、攻撃的には見えなかった。

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