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第十章・3

「ありがとう。もう、いいよ」 「恐れ入ります。このまま、温まりましょう」  涼雅は翠を先にバスタブに入れ、自分は傍に控えるつもりだった。  だがやはり。  涼雅も、一緒に温まろうよ」 「翠さま、さすがにそれは!」  それでも可愛いおねだりに負け、涼雅は恐る恐るバスタブに体を沈めた。  湯があふれ、バスルームが温かな蒸気で満たされる。 「ああ、あったかいね」 「そうでございますね」  顔を向き合わせていた二人だったが、やがて翠が動いた。  涼雅の体に、背中を向けてもたれて来たのだ。 「み、翠さま」 「ね、抱っこして」  背面座位の姿勢で、涼雅は翠を胸に抱いた。  目の前に、匂うような白いうなじがある。  華奢な体をその手にし、目が回る心地だ。 (だが絶対に、理性を失うわけにはいかない)  万が一、涼雅が翠を襲うようなことがあれば、彼は永遠に心を閉ざしてしまうだろう。  頭の中で童謡など唱えながら、涼雅は性欲を一切遮断した。

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