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第十章・5
ベッドに潜り込み、おやすみを言う前に、涼雅は翠に提案していた。
「翠さま。明日、一緒にお出かけいたしましょう」
「え? カフェは?」
「店休日、でございます。たまには、羽を伸ばしましょう」
いいね、と翠はうなずいた。
「どこへ行こうかなぁ」
「翠さまの行きたいところに、お連れ致しますよ」
では、出かけるまでに考えておく、と翠は答えて瞼を閉じた。
ところが、そこに彼の携帯が鳴った。
ラインの、着信音だ。
ベッドに端末を持ち込み、翠は画面を確認した。
「あ、青海くんだ」
彼は、翠を心配して、ラインを寄こしてきたのだ。
「心配かけて、ごめんね。僕はもう、大丈夫だよ……、と」
返信すると、すぐに既読になった。
そして、また言の葉が送られてくる。
やり取りをするうちに、翠は明日、涼雅と出かけることを青海に報告した。
『え? デートするの?』
『いや、一緒に出掛けるだけだよ』
『普通それ、デートって言わない?』
デート。
(僕、涼雅とデートするんだ!)
ようやく、そのことに気が付いた翠だった。
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