67 / 140

第十章・5

 ベッドに潜り込み、おやすみを言う前に、涼雅は翠に提案していた。 「翠さま。明日、一緒にお出かけいたしましょう」 「え? カフェは?」 「店休日、でございます。たまには、羽を伸ばしましょう」  いいね、と翠はうなずいた。 「どこへ行こうかなぁ」 「翠さまの行きたいところに、お連れ致しますよ」  では、出かけるまでに考えておく、と翠は答えて瞼を閉じた。  ところが、そこに彼の携帯が鳴った。  ラインの、着信音だ。  ベッドに端末を持ち込み、翠は画面を確認した。 「あ、青海くんだ」  彼は、翠を心配して、ラインを寄こしてきたのだ。 「心配かけて、ごめんね。僕はもう、大丈夫だよ……、と」  返信すると、すぐに既読になった。  そして、また言の葉が送られてくる。  やり取りをするうちに、翠は明日、涼雅と出かけることを青海に報告した。 『え? デートするの?』 『いや、一緒に出掛けるだけだよ』 『普通それ、デートって言わない?』  デート。 (僕、涼雅とデートするんだ!)  ようやく、そのことに気が付いた翠だった。

ともだちにシェアしよう!