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第十章・7
デート。
寝たように見えて、実は起きていた涼雅は、翠の独り言を全て聞いていた。
そして、汗をかいていた。
「そんなつもりで、言ったことではなかったのに」
坂城家の翠さまと、デートだなんて恐れ多い!
しかし……。
『僕は、涼雅のことが大好き。愛してる』
こんな、もったいない言葉をいただいてしまった。
「翠さまが、私を……?」
主人として、使用人を可愛がるのは自然な流れだろう。
翠さまも、そのような感情が横滑りしていらっしゃるに違いない。
だが……。
『使用人だから、僕を大切にしてくれてるだけかも』
この言葉から察するに……。
「翠さまは、私に純粋な愛情を求めていらっしゃる?」
今度は、涼雅が寝付けなくなってしまった。
何度も寝返りを打ち、溜息をつく。
だが、一つだけハッキリしていることがある。
それは、翠が明日のデートを楽しみにしてくれている、ということだ。
「素敵な一日にしましょうね」
難しい話は、無しだ。
明日のことだけを考えながら、涼雅もまた、寝入って行った。
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