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第十一章・3
「ジェットコースターに、乗ろう!」
「いきなり、でございますか!?」
二時間待ちのアトラクション・コースターは避けて、翠は小さな初心者向けのコースターを選んだ。
「待ち時間が、もったいないからね」
涼雅と一緒だと、二時間なんてあっという間なんだろうけど……。
行列を作っている人々は、スマホ片手に黙々と時間を潰している。
中には、恋人同士と思われる二人組もいるのに。
(僕を放っておいて、涼雅が株価なんか調べ出したら、つまんないもんね)
最近、株の売買に凝っている、という涼雅。
『お金は、あり過ぎて困ることはありませんから』
こんなことを言っていたが、本心はどうだろう。
(お店の資金繰りが、うまく行ってないのかなぁ)
「……さま。翠さま!」
「え? あ、僕たちの番?」
コースターの席に乗り込み、安全器具を着ける。
ゆっくりと上昇を始めたコースターで、涼雅は隣の翠に話しかけていた。
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