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第十一章・4
「翠さま、先ほどはどうなさったのですか?」
「ん? 何が?」
「話しかけても、上の空でございました。よもや、お体の調子が……」
「違う違う。大丈夫! って、あぁ! 落ちるぅ!」
頂上まで達したコースターは、激しく滑り下り始めたのだ。
風が唸り、髪をなぶる。
上へ下へ、横へと体が跳ねる。
「うわぁあ! 楽しい! ね、楽しいね。涼雅!」
「翠さま! 平気でございますか!?」
「翠、って呼んでよ!」
「み、翠……ッ! さま!」
楽しいスリリングな時間は、あっという間に終わってしまい、翠は地上に降り立った。
「楽しかったぁ。後で、もう一回乗ろうね!」
「わたくしは、もう……」
「怖かったの?」
「いえ? そのようなことは!」
実は涼雅も、遊園地は初体験だ。
初めてのジェットコースターに、少々面食らっていた。
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