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第十二章・3

 キスは、する。  翠は涼雅と、キスはする。 「でも、それだけ」  エッチとか、考えたこともなかった。  いや、あの時……。 「一緒にバスタブに浸かった時に、僕は涼雅に触れて欲しい、って思ったんだ」  あの時は、はしたないと考えて、うろたえた。  そんな考えは、いけないことだと、封をした。 『僕、一人エッチとかするけど。翠くんも、する?』 『能登さんと、エッチした? 遊園地から帰った後に』 『意外に奥手なんだね、能登さん。翠くんから、誘ってみれば?』  エッチする、って、普通なことなのかな。  青海くんは顔色も変えずに、当たり前のように話してた。 「いけない。何だか、もじもじしてきちゃった」  邪心を逸らそうと、翠は懸命に働いた。  ハーブティーを、心を込めて淹れた。

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