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第十三章 涼雅となら
「涼雅、愛してる」
愛してる、涼雅。
呪文のように繰り返しながら、翠は涼雅のペニスをその白い小さな手で擦り始めた。
先ほど、バスルームで涼雅がやって見せたように、根元から先に向けて、優しく。
そして時折、先端の溝を指先でこする。
くるくると、こねる。
決して巧いとは言えないが、心のこもった愛撫だった。
しかし、こんなことをして……。
「大丈夫か、翠」
涼雅の心には、不安があった。
まさか、有島にこんなことまでさせられたのでは?
(だったら、翠の心が心配だ)
それには、翠がそっと答えてきた。
「僕、もう過去に怯えるのはイヤなんだ。涼雅と一緒に、前に進みたい」
だから、大丈夫。
「愛してる、っておまじないも、唱えてるしね」
「翠……」
涼雅は思わず、目頭が熱くなった。
翠は自分が思うよりずっと、強くなっている。
過去に囚われていたのは、翠より私の方だ。
涼雅は、大きく息をついた。
ふっと、体が軽くなった心地がした。
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