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第十三章・4
「本当に、愛してる。心から」
だから。
「だから、君を大切にしたい。無理に抱きたいとは、思わないんだ」
「無理じゃない。僕、無理なんかしてないから!」
「だったら、もう少しリラックスしなければ」
翠の体は、緊張で強張っている。
それを涼雅は、心配していた。
このまま彼を抱くのは、簡単だ。
だが、翠の心身がそれに耐えられるかは、解らない。
危険な賭けに出ることを、涼雅は恐れていた。
「僕の初めてを。本当の初めてを、涼雅に捧げたいんだ」
有島に乱暴されたのは、あれは決して愛のある行為なんかじゃない。
翠は、あの悪夢を上書きして消し去りたかった。
そして、それができるのは……。
「涼雅しかいないんだ。僕の純潔を捧げられるのは、涼雅だけなんだ」
大きな瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。
「翠、気分は悪くないか?」
「平気」
「具合が悪くなったら、途中でやめるから」
「大丈夫」
翠の覚悟と愛情を、ここまで見せてもらえたなら、もう迷うことはなかった。
涼雅は、翠にそっと口づけた。
そして、その唇を割って、舌を忍ばせていった。
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