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第十三章・5
涼雅の舌は、まるでウブな少年のように、翠の咥内をさまよった。
迷った挙句に、その舌を捉えて絡ませる。
そんな彼を受け止めながら、翠は思い出していた。
(このキス、有島さまも……)
それを思うと、鼓動が激しくなる思いだ。
その時、涼雅が唇を離した。
「愛してるよ、翠」
ああ!
それこそが、今一番聞きたかった言葉!
翠は、しっかりと涼雅を抱きしめた。
「キス、って。こうするものなの?」
「こんなキスも、ある。ただ、それだけだ」
後は、舌を入れないライトなキスを、涼雅は何度も繰り返した。
全ては、翠のため。
(翠がこの体を私にくれるというのなら、私も全てを彼に捧げよう)
「ふふっ。くすぐったい」
「翠も、私にキスしてくれ」
二人で、長いことそうやってキスを交わした。
涼雅がそっとその首筋に唇を移すころには、翠の体からはすっかり力が抜けていた。
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