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第十四章・8
「強くなった、かな? 僕」
「うん。初対面のころは、か弱いイメージあったけど」
今はよく笑うし、お喋りもするし。
「表情が、生き生きしてる」
「……ありがとう」
青海の評価は、素直に嬉しい翠だった。
(強くなったんだ、僕は)
だったら。
(だったら……)
翠は、ある決意を胸に固めた。
それは、涼雅に反対されるかもしれない。
お医者様とも、相談しなくてはいけない。
(でも、避けて通れない道ならば)
翠は、久しぶりにチェスのことを思い出していた。
お父様の、チェスの駒だった僕。
(あのころの僕とは、違う)
自らの手で、駒を進められるところまで、成長したのだ。
そして、誓った。
「自分から、会いに行こう。お父様に」
いつ、父の召集がかかるかもしれない、とびくびくしながら暮らすのは、もう御免だ。
僕の意思で、お父様と面談する。
大丈夫。
「僕は、独りぼっちじゃないから」
翠の瞳は、力強く輝いていた。
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