99 / 140

第十四章・8

「強くなった、かな? 僕」 「うん。初対面のころは、か弱いイメージあったけど」  今はよく笑うし、お喋りもするし。 「表情が、生き生きしてる」 「……ありがとう」  青海の評価は、素直に嬉しい翠だった。 (強くなったんだ、僕は)  だったら。 (だったら……)  翠は、ある決意を胸に固めた。  それは、涼雅に反対されるかもしれない。  お医者様とも、相談しなくてはいけない。 (でも、避けて通れない道ならば)  翠は、久しぶりにチェスのことを思い出していた。  お父様の、チェスの駒だった僕。 (あのころの僕とは、違う)  自らの手で、駒を進められるところまで、成長したのだ。  そして、誓った。 「自分から、会いに行こう。お父様に」  いつ、父の召集がかかるかもしれない、とびくびくしながら暮らすのは、もう御免だ。  僕の意思で、お父様と面談する。  大丈夫。 「僕は、独りぼっちじゃないから」  翠の瞳は、力強く輝いていた。

ともだちにシェアしよう!