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第十五章 坂城邸へ

 父・武生と面談する。  その翠の決心は、やはり涼雅をためらわせた。 「ようやく、心が伸びやかになって来たところなのに」  武生に会うと、また委縮してしまうのではないか。  それを、涼雅は恐れていた。 「僕ね、以前よりお父様を怖いと感じなくなってるみたいなんだ」  僕は、強くなった。  涼雅と一緒になってから。  そう、翠は言うのだが。 「旦那様は、一筋縄ではいかない御方だ」  それに、しばらく会っていないので、恐怖心が薄れているだけなのかもしれないぞ? 「心配性だな、涼雅は」  大丈夫、と翠は笑顔だ。 「涼雅も、面談の時に傍にいてくれる?」 「私も、か?」 「あ、お父様のこと、怖いの?」 「いや、そういうわけではないが」  そういうわけではないが、涼雅にはもう一つの危惧があった。 (また突然、翠に縁談を持ち掛けないとも限らないな。旦那様は)  その時、自分にできることは何だろう。  翠との関係を、暴露するのか?  もしそのことで、翠が不利な状態に置かれたら……。  思いは、頭の中を渦巻いた。

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