101 / 140
第十五章・2
「涼雅、今いろいろ心配してくれてるでしょ」
「ん? うん……」
「案ずるより産むが易し、っていうでしょう。まずは、会ってみようよ。お父様に」
「翠が、そこまで言うのなら」
軽やかな翼が、その背中に生えたような翠の物言いだ。
その明るさに、前向きな姿勢に、涼雅は賭けた。
(旦那様が理不尽なことをなさったならば、私は翠を全力で守ろう)
それだけは、ゆるぎない決意だ。
「ね、涼雅」
「何かな」
「正直に言えば、少し怖いよ。僕」
「それは、仕方のないことだ」
だから、おまじないを頂戴。
「キス、して」
「キスをすれば、翠は無敵になれるのかな?」
「そうだよ。お父様にだって、負けないんだから」
では、と涼雅は翠に口づけた。
不思議。
涼雅とキスすると、本当に勇気が湧いてくる。
(僕は、絶対にお父様に屈服したりしない)
翠もまた、涼雅に賭けていたのだ。
ともだちにシェアしよう!