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第十五章・4

 医師を見送ったあとの翠は、さすがに表情がやや固かった。 「賽は投げられた、だね」 「動き出すんだな」  武生との面談が、翠にとって吉をと出るか、凶と出るか。  しかし、どう転んでも彼だけは守って見せよう。 (これは、口に出した方がいいのかな)  涼雅は、翠の手を握った。 「翠」  涼雅は、彼の目を真っ直ぐに見て、告げた。 「どんなことが起きても、私は翠を守るから」  途端に、少し伏せがちだった翠の瞳は輝いた。 「うん! 僕も、涼雅を守るからね!」 「え? 私を?」  そうだよ、と翠は不安げな声だ。 「もし涼雅が解雇されて、僕から引き離されちゃったら……」 「そういう可能性も、あったか」  確かに、今は坂城家の使用人だからこそ、翠をここまで任せてもらえているのだ。  武生が涼雅をクビにして、放り出してしまうと、そこまでだ。 「いや。解雇されても、私は翠から離れないよ」 「涼雅?」 「私には、翠が必要だ。……もう、翠無しでは、生きられないからね」  その言葉に、翠は涼雅に抱きついていた。 「涼雅、大好き」 「愛してるよ、翠」  二人抱き合い、口づけ合った。  武生のことなど、頭からどこかへ行ってしまっていた。

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