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第十五章・6
「翠さま! お加減はいかがですか?」
「斎藤さん。今回は、いろいろとありがとう」
この度の面談に当たって、この執事が父に口添えをしてくれたことは、言われなくとも解る。
涼雅の同席を許されたのも、きっと斎藤の押しがあってのことだろう。
翠は、彼に心から感謝していた。
「旦那様が、お待ちです。どうぞ、こちらへ」
本屋敷の、父が使うリビング。
定刻の5分前、翠はそこに到着した。
(あの時と、同じだ)
約3か月前、翠はここに呼び出され、そして……。
(そして突然、結婚しなさいって言われたんだ)
ああ、思い出したくないのに、思い出されてしまう。
あの時の、絶望。恐怖。焦燥。
「翠」
そんな翠の手を、涼雅が握った。
大きな手のひらで、しっかりと握ってくれた。
それだけで、勇気が湧いてくる。
「うん、平気だよ」
翠も、涼雅の手を握り返した。
そして、斎藤の導きで室内に入った。
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