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第十六章・2

「いくら旦那様のお許しがあったとしても、坂城家の御子息に乱暴するなど。到底今後、お付き合いできる人間ではないでしょう」 「その、有島さんの代わり、という人間は、信用に足る男なのか?」 「おそらく、充分に」 「どこのどなただ。言ってみろ」 「それは、わたくし・能登でございます」  武生は目を見開き、翠は口を開けた。 (涼雅!? それって。その言葉の意味、って)  涼雅は、体ごとこちらを向いてぽかんとしている翠に、微笑んで見せた。 「わたくしは、翠さまと結婚しとうございます」 「涼雅」 「翠、一緒になりたい。いいか?」 「うん!」  武生は、目の前の出来事について行くのがやっとだった。 「お、お前たち。いつの間に! 能登、お前は使用人の分際で、翠をかどわかし……!」  旦那様、と涼雅は武生を見下ろす姿勢で立っている。  それに気づいた武生は、彼に掛けるよう促した。 「まずは、座れ」 「失礼します」  さて、と涼雅は武生を正面から見据えた。

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