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第十六章・4

(この男、大きくなったようだな)  思えばその父も、この坂城家に忠義を尽くしてはくれたが、大きな懐を持つ男だった。  仕事上の相談を、武生は涼雅の父に幾度となく持ち掛けたものだ。 「それほど言うなら、調査してやる。お前が、坂城家に有用な人間かを、な」 「ありがとうございます」  翠は、涼雅の話に目を回していた。 (涼雅、いつの間に! 時々パソコンいじって、そんな商取引してたの!?)  株の売買をしている、とは聞いていたが、まさか外国に金山まで買ってたなんて!  そんな涼雅は、武生にとどめを刺しに来ていた。 「では、わたくしの調査が終わるまでは、翠さまの御縁談は延期してくださいますね?」 「……致し方ない」 「明日のお見合いは、お断りくださいますね?」 「解ったと言っているだろうが!」  竹下も有島も、涼雅の話が本当ならば、その資産は彼より劣る。  最も信用していた男の息子という肩書も手伝って、武生の中で涼雅の株はぐんと上がっていた。  

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