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第十六章・5
「お父様、ありがとうございます!」
嬉々とした我が子の声に、武生は少々可笑しくなった。
「翠。能登に嫁ぐ気は、満々なのか?」
「はい!」
少しだけ、武生の口の端が上がった。
(お父様が、笑みを!)
「解りやすいことだ」
では、と涼雅はソファから立ち上がった。
「本日は、これにて失礼いたします」
失礼いたします、と翠も立った。
「今夜は、泊って行かないのか?」
「明日も、カフェがございますから」
良かったら一度、お越しください、と涼雅は武生に勧めた。
「翠さまの淹れるハーブティーは、絶品でございます」
翠も、武生に笑顔を向けた。
それは、彼の顔色をうかがうものではなく、心からの笑顔だった。
「ぜひ、お立ち寄りください」
「そうだな。いずれ、行ってみようか」
武生もまた、翠に初めて柔らかな笑みを寄こしていた。
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