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第十六章・6
帰り道の車の中で、翠は泣いていた。
「どうしよう。僕、嬉しいよ。もう、嬉しくって仕方がないよ……」
涼雅から、結婚を申し込まれた。
しかも、父はその縁談に乗り気だ。
ああ、どうしよう。
僕、僕、涼雅と結婚……!
「翠。大切なことだから、後でちゃんと言い直すから」
「え? 何を?」
「その……、プロポーズ」
「……うん!」
『翠、一緒になりたい。いいか?』
お父様のリビングでの、あの言葉。
短くて、ぶっきらぼうだったが、その分ストレートに心に飛び込んできた。
あれ以上の言葉をもらえるなんて……!
「嬉しいな。嬉しいなったら、嬉しいな!」
「泣いた後は、歌い出す、か」
ハンドルを握ったまま、涼雅は苦笑いしていた。
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