124 / 140

第十八章 過去を乗り越えて

 梅雨も末を迎え、時折激しい雨が降るようになっていた。 「あ、雷だ!」  雷鳴に、翠が耳をふさぐ。 「翠くん、雷が嫌いなんだね」  青海が、笑いながらティーカップを下げる。  そんな、午前のカフェ。  雨のせいか、客足は鈍かった。  それでも出勤前の朝からモーニングを注文する客もおり、そこそこの賑わいは見せていた。  涼雅からプロポーズを受けたことは、青海にはまだ秘密だ。 『旦那様の、正式なお許しが出てから、公にして欲しい』  それが、涼雅からの願いだった。 (お父様がお許しくださらなくても、僕は涼雅と結婚するんだけどな)  慎重な涼雅の意見を少し不服に感じながらも、翠は言いつけ通り黙っていた。  静かな音楽の流れるカフェに、ゆったりとした時間が流れる。  そこへ、静寂を破る人間が現れた。

ともだちにシェアしよう!