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第十八章・3
隠れた翠には、有島も気づいた。
「あれ? さっきまで居たのに。翠くんは、どこかな?」
翠は、耳をふさいで震えていた。
(嫌だ。早く帰って! どこかへ行って!)
「翠をあなたに会わせるわけには、いきませんよ。有島さま」
ゆっくりと、涼雅がカウンターから出てきた。
「君、店長? 私のことを知ってるなら、話は早いよ」
有島電工のトップが、会いたいと言っているのだ。
早く翠をここに出せ、と駄々をこねてきた。
「二度目のお見合い、楽しみにしてたのに。急に中止だなんて、つれないな」
「翠は、もう二度とあなたには会いたくないそうです」
「何で?」
「御自分の胸に、聞いてみたらいかがですか?」
有島は、いちいち突っかかる涼雅にイライラしてきた。
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