127 / 140
第十八章・4
「そもそも、君は翠くんの何なの? 『翠』だなんて、やけに馴れ馴れしいけど」
「婚約者、です」
それには、青海が驚いた。
(翠くん、能登さんと!? いつの間に!?)
しかし、素直な言葉が口から出てきた。
「おめでとうございます、能登さん!」
そして、翠くんも!
「水臭いなぁ、翠くん。教えてくれれば良かったのに!」
カウンターを覗き込んだ青海に、有島が彼の居所を知ってしまった。
「そこに隠れていたのか」
カウンター席に掛け、有島は翠に声をかけた。
「出ておいでよ。いい所に、連れて行ってやるよ」
冗談じゃない。
どこに連れていかれて、何をされるか解ったもんじゃない。
それでも翠は精一杯の勇気を振り絞って、細い声を出した。
「お帰りください」
「客に、帰れと? 何てカフェだ、ここは!」
いいから、お茶を出してよ。
有島は、長居をする気でいた。
そして翠を、我がものにするつもりでいた。
ともだちにシェアしよう!