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第十八章・7

 顔を真っ赤にしている有島に、お付きの部下が何やら耳打ちをした。  すると今度は一転して、真っ青になった。  涼雅の話がハッタリではなく、事実だということが解ったらしい。 「今日は、これで失礼する」  慌ただしく席を立つ有島に、翠は叫んだ。 「もう、二度とお会いしませんから!」  返事はなく、有島は店外へ出て行った。  へなへなとその場に座り込んでしまった翠に、涼雅は優しく声をかけた。 「大丈夫か、翠。よく、頑張ったな」 「言いたいことは、言えたよ……」  もう、二度と会いたくない。  もう、二度と会わない。  そしてそれは、涼雅の画策で現実のものとなるだろう。  有島電工は今、社史最大の危機を迎えているのだ。 「彼の処罰は、私に任せておいてくれ」 「もう、どうでもいいです。あんな人」  涼雅のおかげで、溜飲が下がった。  そんな風に、翠はぼんやり考えていた。

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