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第十九章・3
お屋敷にいた頃には、お茶を淹れる趣味を叱られていた。
使用人の真似事など、坂城の恥だと怒られていた。
それを、褒めてくださるなんて!
涙目の翠の隣には、彼を守るように涼雅が寄り添っている。
武生は、そんな涼雅に声をかけた。
「能登。翠を一人前に導いてくれたこと、礼を言うぞ」
「もったいないお言葉です」
しかし、旦那様は翠のお茶を飲みに、わざわざこのカフェに?
涼雅は、翠より少しだけ周りが見えていた。
ただそれだけのために、御勤務を割いてここにお見えになるとは思えないが……。
「今日は、返事を伝えに来た」
やはり、と涼雅は気を引き締めた。
以前、坂城邸で交わした言葉を、涼雅は忘れてはいなかった。
『それほど言うなら、調査してやる。お前が、坂城家に有用な人間かを、な』
涼雅の起こした事業が、武生の目にかなえば。
(旦那様に認めていただければ、翠との結婚を許していただけるはず!)
「目つきが悪いぞ、能登。そんなに私が信用できないか?」
「いえ、決してそのような」
武生は、少し口の端を上げた。
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