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第十九章・8
「今までありがとう。そして、これからもよろしく」
「僕は、いつまでも涼雅の傍にいるよ」
ふいに、どん、と大きな音がした。
「何だろう」
「あ、花火大会! 今日、花火上げるんだって、青海くんが言ってた!」
二人で窓辺に寄ると、きらきらと花火が夜空に咲いていた。
「綺麗だね」
「美しいな」
「ね、まるで僕たちを祝福してくれてるみたい」
「そうだな」
この花火を眺めている人々は、どのくらいいるのだろう。
その人々全ての幸せを、翠は願わずにはいられなかった。
「8月の花火は、会場で見たいな」
「行こう。二人で観に行こう」
「嬉しい!」
二人で手をつないで、花火を観よう。
夜空にきらめく大輪の花を、楽しもう。
「でね、涼雅。海にも行きたい。山でキャンプもしてみたいし、朝顔市にも行ってみたい!」
「解った。全部行こう!」
はしゃぐ翠は、もう過去に縛られた悲しい存在ではない。
未来を見ることができるようになった、明るい少年だ。
涼雅と翠、二人寄り添い窓辺に立って花火を観た。
華やかな未来を導くような花火を、いつまでも眺めていた。
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