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可愛らしいご主人様
雫さまの専属執事になって一ヶ月。
私の毎日は、とても充実している。
雫さまと対面した日……。
私は職場復帰を蹴って専属執事になった。
叔父御である公爵にはもちろん、私にまで恥ずかしい思いをさせないようにと一生懸命頑張る姿に感服する日々が続いている。
ご尊父とご母堂の面影をうつした可愛らしい顔(かんばせ)は私の庇護欲を大いに刺激するし、艶やかな黒髪もいい。
控えめなしぐさも、小動物っ気全開なのも堪らないのだ。
初めの二週間は緊張していらしたが、少しずつ私に慣れられたようだ。
私を呼び捨てすることを躊躇なさっていたが、……何と言えばよいのだろう。
唇の動きを読んでの会話なのだが、優しい思いが籠ったお言葉だと感じるのだ。
それは気のせいではない。
確信できる。
そして、微かな物音にも飛び起きていた雫さまが、ぐっすり寝入ってくださるようになったのも嬉しい変化のひとつ。
そっと天蓋のカーテンをめくると、すよすよと眠る雫さまの姿。
ふむ。
今朝も実に可愛らしい寝顔だ。
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