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第2話

外の空気は気持ちが良い。 窓1つ無いあの部屋は、絵の具や僕の血の匂いが蔓延して あまり良い場所とは言えないから。 種類が豊富な絵の具屋を目指して真っ直ぐ歩いた。 僕がどんなに汚れていようが、 街ゆく人々は僕をまるで見えないもののように扱う。 見た所で気持ちの良いものでは無いし、仕方ない。 別の道など知る由もない僕は、 ただ、その店だけを目指して1歩、また1歩と足を進めた。 「いらっしゃ───…。」 いらっしゃいませと言って貰えないことにも慣れた。 お前を迎えたいだなんて思っていないと、 そう言われているようで初めは心苦しかった。 だが、それも慣れてしまえばなんとも思わなくなる。 仕方の無い事だ、と。 暫く店の中を巡回してみれば、見た事のないような不思議な色が並んでいる。 外に出ることを許され、沢山の色に囲まれているこの時間は 僕にとって何よりもの楽しみだった。 作家様に決められた色を購入することしか許されてはいないものの、 こうしてまだ僕の知らない色を教えてくれるから、 新しい世界を知れた気がして嬉しいんだ。 …僕とは無縁の世界でしかないのだが。 切らしていた色と、残りが少なかったそれを何本か手に取って 精算を済ます。 本当はもっと見ていたいけど、 帰りが遅くなれば作家様に怒られてしまう。 と、 「いらっしゃいませ。」 店員は入口に向かって、僕には言わないその言葉を放った。 誰か来たのか。 僕のような汚れたΩではない、誰かが。 …客の気分を害さないよう、 早くここから出なければ。 こんな汚いΩと店で鉢合わせるだなんて、客も可哀想に。 ……慌てて袋に詰められたそれらに手を伸ばした時だった。 「あなたも絵の具を買いにここへ?」 「…………え。」 大きな荷物を背負った細身の男が、 僕に向かって口を開いた。

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