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第15話
残り2日のタイミングで、ようやく僕の絵は完成した。
これまでに見て来たどんな景色よりも、どんな人間よりも
“一番綺麗なもの”だ。
カイリが塗り途中だった女性の絵は
カイリを埋葬する前に色を塗って出した。
カイリの目の前で、カイリならどう塗るだろうかと
それだけを考えて。
“リオン”の絵は
一つの絵と、その隣で息絶えた男の光景を描いたものだ。
皮肉にも、カイリの描いた女性は僕には悪魔にしか見えなかった。
どんなにカイリがこの女性を思っていたとしても、
そのせいでこうして今、この場所からカイリが姿を消してしまったのは事実。
その原因を作ったのは、僕と言う悪魔と、この絵に描かれた悪魔。
『悪魔に殺された絵描き』
そうタイトルをつけて、
リオンとしての人生に幕を閉じた。
リオンの絵は、類稀なるセンスと独創性で
見事優秀賞を受賞。
カイリの絵もまた、繊細で細やかな描写が評判を呼び
新人賞を受賞した。
人々は、リオンをいつかの『闇のマリア』の“本当の”作者ではないかと言い出した。
けれど、様々な出版社がどんなにリオンを探そうと、
リオンという作家はまるでどこにも存在していないかのように、足跡すら追えないまま。
今彼は一体、どこでなにをしているのか。
それを知っている人物は、この世でただ1人だけ。
…今大会で新人賞を受賞した“カイリ”だ。
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