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第75話★【2年前】(52)
キッチンから部屋に戻ると、サキは変わらず本を見ていた。真剣に読むというより、内容を拾い読みしているといった感じだった。
レンの視線に気づくと、サキは本をサイドテーブルにぽいと放り出し、レンを見た。なんとなく恥ずかしい。レンはおずおずと近づくと、ベッドにちょこんと座った。サキの手が伸びてきて、レンの手の甲を包む。
「昼寝、しないのか?」
「あんまり眠くないかも」
「それはよかった」
ゆっくりと慎重な動きで、サキの手がレンの手を引く。逃げたくなったら、いつでも逃げられる。そういう感じだ。引かれるのに任せて、レンはサキの隣に横たわった。
ひどく優しい目が、レンをじっと見ている。髪が撫でられ、うなじに手を添えられる。すぐそばで見つめ合うと、心がほどける。
「プリン、うまかったか?」
「うん。東京に来て初めて見たから、我慢できなかった」
「我慢しなくていい。お前が好きな物を食べて楽しそうな顔をするのは、いつまで見てても飽きない」
「途中で本読みに行ったけど?」
「俺がずっと見てたら嫌がるかと思っただけだ」
不意にサキは身を起こした。レンの耳元に顔を近づけ、からかうように囁く。
「本当は本なんかそっちのけで、お前がプリンに鼻を突っ込んでるところを見てた」
「いじわる」
「好きな物を食べてるお前は可愛いから、途中でやめられたら困る」
思わずサキの顔を見る。
「オレ別に可愛くない」
「見た目とか性格とかの話じゃない。お前が敵のど真ん中を度胸一発突っ切ってみせる、気合の入った戦闘員なのは知ってる。そうじゃなくて……」
さらりと髪を梳かれ、うなじが引き寄せられる。唇を合わせると、サキの舌が押し入り、レンの舌に絡みつく。唾液があふれ、頬を伝う。歯列をなぞり、粘膜を撫で、口づけは深くレンを甘やかす。
ぼおっとなったレンは、何を話していたのかよくわからなくなった。口の中が掻き回され、サキの手が脇腹をさらりと撫で上げる。新しいTシャツの下で、サキの手はレンの肌に熱を与える。
髪の中に手を入れたまま、サキは唇を動かしていく。顎の輪郭から首筋へと唇は下りていき、手は脇腹から背中をさすり上げる。
サキの親指が、胸の突起を掠めた。もどかしい感覚が生まれ、レンは思わずサキの頭に抱きつく。さらさらした髪が肌の上でざわめく。喉に吸いつかれると、レンは無意識に仰向き、喉笛をサキに晒して溜息をついた。
それを合図にしたように、サキが起き上がった。Tシャツを脱ぎ捨て、レンのTシャツを引っ張る。レンも上半身を浮かせて自分のTシャツを脱いだ。こんなの邪魔くさい。
ベッドの下にぱさりと白い布地が落ちる。起き上がったまま、両腕を互いの背中に回す。サキがレンの腕を引いた。されるがままに、胡坐をかいたサキの下半身にはまりこむ。上半身の肌を触れ合わせたまま、舌を突き出し絡め合う。角度を変えて、深く。深く。
コットンパンツ越しに、硬くなり始めた先端が触れ合った。思わず腰を突き出し、感じる場所をサキにこすりつける。
「怜……」
喉から鎖骨へと下りていくサキの唇は、やがて胸にたどり着く。小さな突起を口に含まれ、レンはのけぞった。ぽすんとベッドに背中が当たる。
愛しげな眼差しがレンを見ていた。サキはゆっくりとレンに覆いかぶさり、腕でレンの頭を抱え込むと、唇で耳を優しく咥えこんだ。痺れるような快感が全身を走り、レンは目をぎゅっとつぶって波をやり過ごした。
「怜……さっきわかったと思うんだが」
囁き声が耳の中を震わせる。名前を呼ばれると、頭がおかしくなりそうだ。自分の名前が耳の一番奥を撫でる風になる。
「なにが?」
「俺がお前をどうしたいか」
艶のある声が、レンを誘惑していた。想像してごらん。これから自分の身に何が起こるか。
「どう、したいって」
「髪を洗ってもらうのは気持ちよかったか? 爪を切ってもらうのは?」
目をつぶったまま、レンはサキの声の波長そのものが耳の中を撫でまわすのを感じた。
「きもちよかった」
「そうか。よかった。じゃあ、俺が何をしたくて堪らないか、わかるか?」
サキの手が下着の中に潜り込み、レンの芯に触れた。指先がゆっくりと輪郭をなぞる。先端で丸く円を描かれ、レンは腰を浮かせた。
「頭の中で、自分がこれからどんなふうに愛されるのか、考えてごらん」
言葉を追い出そうとしても無駄だった。意味そのものが、耳奥にとろりと注がれている。
サキの手が胸の上をさまよい、突起にいたずらする。ぼんやり目を開けると、サキの目がじっと自分を見ている。欲望で昏く輝く、夜の目だった。
目をつぶる。
「ほら……考えるだけで、楽しくならないか?」
「楽しく?」
「そう」
下着ごとコットンパンツを脱がされ、肌が空気にさらされる。サキも自分の服から雑に脚を抜く。衣擦れの音と共に胸から腹、太ももから足首までが温かい肌に包まれる。耳を柔らかく食む唇が、密やかな呪文をレンの脳へ届ける。
「考えたか?」
考えるって……何を……。頭を洗ってもらう感覚、マッサージが心の中の氷を解かす。爪を切ってもらう、硬い汚れが小気味のいい音で切り離される。
それから?
サキの器用な指が中でどんなふうに動くの? 思いついた途端、体が熱くなった。低い声が耳のそばで笑う。
「あ、あの……待って」
「待ってもいいのか?」
顔を上げたサキの目が誘っている。動かずに肌を合わせているだけなのに、レンはじっとしているのが辛かった。心臓が鼓動するたびに響く振動や、呼吸する体の動きだけで、密着した胸が気持ちいい。
体を動かして肌をこすり合わせたい。手の平の中で、薫さんの肌を、その下でうねる筋肉を感じたい。それに……。
体の一番奥の疼きが強くなって、レンは身じろぎした。
「せめて、その、オレが口でするってのは」
「それは楽しくないな」
薫さんは面倒をみるのが好き。それはつまり、そういうことで。
「リラックスしてればいい。お前のサービス精神はバスルームに流してきたと思って」
「そんなわけいかな、んっ」
胸とペニスを同時に刺激され、レンは呻いた。温かく湿った口の中で、胸の小さなそれは存在を主張し始めている。いつもは意識しない場所がコリコリと甘噛みされ、刺激は小さな電流のように体を走る。
「つ、つまり薫さんが」
「そういうことだ」
サキの舌先が鎖骨を舐めた。
「人質生活、これだけを楽しみに乗り切ったんだ。目の前をお前がフラフラしてるのが、どれだけしんどかったかわかるか?」
「しんどかったの……そこ?」
「あったりまえだ。間抜けで杜撰な警備態勢も、気取ってばかりで弱い者いじめしかできないクソ野郎もどうでもいい。お前が辛そうな顔で部屋の隅っこにいるのが、一番耐えられない」
「ごめんなさい……」
「謝ることじゃない。これから埋め合わせするしな」
するりと首筋を撫でられ、レンは吐息を漏らした。薫さんって、やっぱり面白い。咥えろって無理やり喉に突っ込んできたりしないし、汚い体のまま、馴らさないで挿れたりもしない。挿れさせてくれたら守ってやるっていう交換条件もないんだ。
守ってもらう必要なんかないって、薫さんはわかってくれてる。ただ、気持ちいいなってオレが思うのが楽しいみたい。
オレも、信じられないぐらい楽しい。
くすりと笑うと、頬を撫でられた。薫さんが覆いかぶさってくる。すごく優しい目。レンはゆっくりとその首に両手を回して引き寄せ、自分からキスをした。
背中を抱かれ、太ももが撫でられる。薫さんの唇が首筋をゆっくり下りていく。指先が胸にいたずらしている。固く存在を主張し始めた場所を、ねだるように突き出す。
柔らかい水音と共に、薫さんの唇が欲しいものを与えてくれる。舌先でこねまわされ、じんじんするような快感が胸から腰へ送り込まれる。じらすように口を離されると、空気にヒヤリとさらされる。
「あ」
こぼれた声に、低い笑い声がかぶさった。薫さんはそのまま下へ下へと舌先を進めていく。
「んんっ」
じゅぶりと芯を咥えこまれ、レンは思わずのけぞった。温かい場所で、先端が舐められている。ゆっくりと全体が喉奥まで引き込まれ、シャフトがしごかれる。
「あ、あぁやだ、やぁ」
思わず薫さんの頭を押しのけると、なぜか薫さんは身を起こした。枕を重ねてヘッドボードに当てると、怜の体を引っ張り上げる。
「これで、怖くない」
何を言われているのか、怜はわからなかった。
ヘッドボードに寄りかかると、怜は薫を見下ろした。妙に楽しそうに光る目で、薫は怜を見返している。
なんか……これ……。おかしくない?
思った時には遅かった。薫が深々と怜のペニスを咥えこむ。その光景をもろに見て、怜は変な叫び声をあげた。硬くなった自分のモノを、薫は喉の奥へ引き込み、全体を吸い上げる。
「あ、あぁぁ」
どうしよう、オレもしかしてバカ?
男っぽい薫さんの顔が上下する。自分のペニスが深々と咥えられ、怜は喘いだ。さっきより恥ずかしいのに、目が離せない。
「や、やぁぁぁん」
薫さんの目が怜を見る。楽しそうに口を使いながら、その光景を見せつけてニヤリと笑う。
「ほら、ちゃんと見えたら、怖くないだろ?」
「や、やぁ」
「いやじゃなくて、イイところを教えてくれ」
口を離した薫が、手で怜の芯を包みこみ、ゆっくりと上下させる。丸い膨らみをやわやわと揉まれる。怜に見せつけるように、薫は音を立てて濡れた先端に口づけた。
「あ、あ」
「どこ感じる? この辺?」
自分の屹立の先端が包みこまれ、くるりと手の平を回される。それが全部見える。
「ほら、次にどうしたら楽しい?」
「あ、あ」
「怜は意地悪だなぁ。俺になんにも教えてくれないのか?」
先端を浅く咥えこむと、薫は再びそれを口の中へ導いた。とんでもない光景。薫さんの口から、いやらしい音と一緒に自分のペニスが出入りしている。怜は思わず顔を覆った。でも、いくら目を逸らしても感覚はダイレクトに快感を脳に送り込んでくる。
「こ~ら、逃げるな」
絶対に薫さん面白がってる。こちらを見て楽しそうにしている薫を指の隙間から見て、怜は真っ赤になった。
「こんな、こんな恥ずかしいの……」
「でも怖くないだろ?」
「……まぁそれは……」
「最初に俺のところに来てくれた時も、明るいところでお前が気持ちよさそうにする顔が見たかった」
「あれは……暗かったから、その、勝手にできたし」
返事を聞かず、薫はサイドテーブルに手を伸ばし、ビニール袋からローションとコンドームの箱を引っ張り出した。箱の中から取り出したパッケージの封を切る。
「正直なとこ、明るくても不安なしにセックスに集中させたい、とは思う。性欲を処理するだけじゃなくて、脳みそがとろけて……愛されることに慣れて欲しくて……」
そこまで言うと、薫は身を屈めた。怜の屹立を手に取り、コンドームを口に咥える。口を使って先端にゴムをかぶせると、喉の奥まで使ってペニス全体をしごきながらゴムをかぶせていく。
「うあぁ……」
ぬるりとした感覚と、ぴったりと押し包まれる感覚を同時に感じて、怜はのけぞった。ゴムを誰かにつけたことはあるけれど、つけられたことはない。単なる道具が、薫のせいで卑猥なセックストイになる。
「ゴムをつけられるの、どんな感覚だ?」
「あぁ……イきそう……」
呆然と呟くと、薫が満足そうに首筋にキスした。
「それはよかった。怜。楽しむんだ。どんな小さなことでも。お前が楽しんでくれたら、それで俺は幸せになれる」
「楽しむ……の……?」
「そうだ。ほら、ローションの蓋を開けて。俺の手に垂らしてごらん。好きなだけ」
薫が途中まで開けてあった蓋は、簡単に開いた。両手を差し出し、薫が柔らかく微笑んでいる。その顔、ずるい。何もかも許したくなる。恥ずかしいことが、すごく楽しいことになる。
催眠術にかかったように、怜はローションのボトルを傾けた。あぁ……これから、このとろりとしたローションでナカをいじられるの? 考えただけで、いい気持ち。
薫はローションを受けると、それをゆっくりと怜の腹にこぼした。冷たくてほんの少し不安。薫がそれを怜の腹の上でかき混ぜる。くちゅくちゅという音と共に、ローションが肌に馴染んで温かくなっていく。お腹もあったかくなって、頭の中がほわんとなる。
「怜……ローションが温かくなってきた。お前のナカは……もっと温かい」
「ん……気持ちいい……」
くちゅ、くちゅ。まるでもうナカを掻き回されてるみたい。薫さんがこれから挿れてくれる。そうしたら、きっとお腹の中でこの音がするんだ。
ふふ、と小さく笑って、怜は中指を咥えた。自分がこれから何をされるか、想像してごらん? 薫さんは怖くない。何をするのか、先に教えてくれる。すごくいやらしいこと。すごく気持ちイイこと。
お腹から薫さんの手が離れる。指が孔の入り口の襞をなぞる。
「怜のここ、もうちゃんと、何をされるのかわかってるんだな」
「うん……」
先にわかるのって、楽しい。孔の入り口が開いて、挿れて欲しがってる。怜は無意識に中指をしゃぶった。同時に薫の中指が入ってくる。
「あ、あぁん……」
ちゅぷ、と音がする。襞の細胞がちゃんと待ち受けて、ローションごと薫さんの中指をしゃぶる。
「怜」
太ももにキスされ、体が震える。
「ん……もっと奥……あ……そこ」
「ここ?」
ふぁあん、深い吐息が口から出ていく。感じるところを押し広げられ、優しくさすられる。薫さんの指が動いてる。動いて……。もっと。知らないうちに、怜は中指だけでなく薬指まで咥えて自分で口の中を上下させている。粘膜が気持ちいい。ぬるぬる、気持ちいい。
薫さんはそれを見て、指を2本にしてくれる。じゅぽ、と指の間に隙間を作る。作られる。空気が泡立つ感じがすごくいい。
硬くなり始めた前立腺を、薫さんがいじってくれる。とん、とん、優しくいたずらされるたび、腰が動く。あぁん、やめないで、そこいっぱい、いじって。指くちゅくちゅして。もっと。指が3本になって、もっと欲しくなる。
「あ、あ……」
体の奥の疼きが我慢できなくなって、怜は口の中で指を動かせなくなった。だらしなく口が開いたままになり、指がずるりと抜ける。よだれを垂らして、怜はへらんと笑う。楽しい、すっごく楽しい。奥いっぱい、薫さんの指、気持ちいい。
「どんな感じだ?」
「……あぁ……気持ちいい……薫さんの指、きもちいい」
感じる場所を、薫さんはずっと触ってくれる。出して……挿れて。いっぱいいじられてる。指で奥のしこりを挟んで、揉んで。
「ん、あぁ」
「このままイきたいか?」
「やぁん、薫さんがほし、ほしい、挿れてぇ」
「わかった」
顔の横に放り出されていた箱に、薫の指が伸びた。その仕草をぼんやり見る。薫は右手で怜の奥を悦ばせたまま、左手に持ったパッケージを歯で噛み切った。怜の脳が快感を拾う。あぁ……薫さんが、オレに挿れるゴム、咥えてる。長くて男っぽい指が、ゴムをつまんでる。
ずっと奥をいじられながら、準備がされていくのを怜は見せられている。大きい……あれで奥、こんこんしてもらうの? 考えただけで奥が締まり、薫の指の形をありありと感じる。ゴムが先端から段差の輪郭をぴたりと包み、竿に沿って下りていく。
「すごく……きれい」
「何が?」
笑いを含んだ声で薫が聞き返す。
「薫さんが」
「お前の場合、俺じゃないだろ」
じゅぶ、と奥で指を曲げられ、怜はのけぞった。あぁんっそれ、感じちゃう。嬌声が勝手に漏れる。
「これから……薫さんが挿れてくれるって……あぁ奥、突かないで、イっちゃうの、イっちゃう」
ガクガクしながら怜は抗議する。まだイきたくない、薫さんにお腹の奥、突いてもらいながらイきたい。
「や、やぁん薫さん、早く挿れてぇ」
「ん~、待て、もうちょい」
「やだぁ、はやく、ほし」
ぬるぬるとお腹のローションがかき混ぜられた。もうそれだけで全身が震えるほど気持ちがいい。
薫は屈みこみ、怜にキスをした。舌を突き出し夢中で応じる。薫のペニスが、腹の上を突く。ぬるぬるとローションの上で動き、おへそをつつく。
「んぅ、ふ」
ゴムの表面にローションを塗りながら、薫は身を起こした。怜の腹の上で、薫がペニスをゆるゆると上下させる。頭がくらくらする。これから、薫さんのが、こんなふうにお腹のナカで動くの?
「あ……」
「いっぱい想像してごらん」
くすりと笑うと、薫が腰を引いた。後腔が期待に口を開け、薫のペニスの先端にキスをする。
ゆっくり、本当にゆっくりと薫が入ってくる。押し広げられる感触。先端の太い輪郭をありありと感じさせられ、怜は喘いだ。一番太いところが、粘膜を分けていく。段差がくぷくぷとナカをこすり、ぞわぞわとした快感を怜の体全体に広げていく。
「あぁあ、あ、はいってくる」
「うん、そう、だな」
薫の声も掠れていた。長い竿が、ナカ全体を撫であげていく。一番感じる場所を雁の段差がゴリっとこする。
「あふっ」
鼻にかかった声が漏れ、怜は思わず薫の腕を掴んだ。だめ、こんなの、すぐイっちゃう。
「怜、あと……ちょっと」
食いしばった歯の間から、薫が声を漏らす。奥の粘膜が薫を迎え入れ、ぬるんと先端を舐め包む。
「うあ」
薫が呻いた。そろそろと腰を引く。
「怜……大丈夫か?」
「だいじょうぶ……すごくいい……」
今までのどんなセックスよりも満たされて、怜はうっとりと笑った。全然違う。体じゃなくて、心が満たされて、とろとろのあったかい場所にいるみたい。薫さんがちょっと動くだけで、体がすみずみまで蕩ける気がする。
薫の顔が近づき、愛おしそうな顔でキスしてくれる。舌を絡めると、繋がったところがもっと潤う。うっとりした頭で、怜は素直にそれを口にする。
「あぁ……とけそう」
「楽しいか?」
優しい声が響き、吐息が耳を、うなじを撫でる。
「うん、たのしい、あったかくて……ぬるぬるする」
「よかった。俺も楽しい。お前のナカ、熱くてとろとろになってる。動いてみてもいいか?」
「だいじょうぶ。あ、あぁ」
薫が慎重に腰を引く。硬いモノがずるずると粘膜を舐めていく。今度は入ってくる。細胞が全部開いて、悦んでる。
とろんとした目の怜をじっと見つめながら、薫が動く。奥まで満たしてはナカ全体を刺激してくれる。
じゅぶ、と水音が聞こえて、怜は息を吐く。素敵な音。繋がってる境目が溶ける音。硬くて甘い棒を、怜の奥がしゃぶる音。
「あぁあ、きもちいい おく、もっと」
「こうか?」
かおるさん、だいすき。一番いいところを深く突かれて、怜は腰を浮かせた。自分からこすりつける。薫が少し速めてくれる。いっぱい動いて。そしたらどんどん、甘くなる。
「あ、あぁ……」
水音をずっと聞いてる。頭の中まで音は響いている。薫の荒い息が心地いい。薫さんも、気持ちがいいんだ。さっきから何も言ってないけど、でも顔が見える。薫さんの目も、朦朧としてる。
「かおるさん、きもちいい?」
「あぁ……最高……」
吐息を合わせながら、一緒に腰を動かす。感じるところを、深く突かれながらキスをする。キスしたまま一緒に体を揺する。互いの境界が消えて、ひとつの快感にとろとろ浸る。
「ん……はぁ」
薫が首筋を舐めながら動きを速くしてくれる。ぬるぬるしてるのに、硬くて熱い。とろけてるのに、奥がきゅんきゅん締まる。
「あ、これ……すき おく、こんこんしてぇ」
「んっ、ふ、あ」
「あぁすき、もっと」
「ふ ふ あぁ……俺も やばい」
薫の汗が肩を伝い、手首に下りる。握っていた怜の手ににじむ。怜の目の前に、薫の胸がある。怜はうっとりしながら胸を舐めた。薫が呻く。汗の味に興奮して、奥が薫の形をくっきり型どる。
「うあ、締めるな怜」
あぁたのしい、ナカが……かおるさんのかたちになるの。ゆるゆるしたらとけて、きゅってしたら硬い。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら、怜は薫の胸に口づけを落とす。薫の動きが速くなる。じゅぶ、じゅぶ、音と一緒に奥にあたる。すごくイイ。
ん……かおるさんの、おくいっぱい、こんこんしてる。いいとこ、いっぱい、あたる。
「……あぁ」
「く」
薫の荒い息が胸に当たっている。腕が掴まれ、押さえ込まれる。ペニスが奥を打ち、襞全体をずるずるこする。
「はぁ……あ、あぁん、おくゴンゴンして、あ、んっ、そこ、そこぉ……」
「うく、ふ」
水に包まれて、ひとつにとけて、ずっと、ずっとこうしていたい。とろとろになって、かおるさんとつながってるの。
「あ……だめぇ、イっちゃう、やだぁ……ずっとごんごんしてぇ……」
「く、あふ、イ……きそうだ」
ぎゅっと手を掴まれて、掴み返す。
朦朧とした頭で、怜は声をあげて笑った。あぁ……だめ、かおるさんとのセックス、しぬほどたのしい。
「あ……あん、あは、ふ」
「怜……たのしい?」
「くふ、あは、あ、あたま、とけちゃう、とけちゃ う」
きゅん、とナカが強く締まった。抽挿が深くなる。
あ、あ、そこあたる、だめぇ……かおるさんだいすき、だいすき、いっぱいついて、あ、とけちゃう、とける……
「んっ、怜、イく……」
「あぁ、あ」
おく、かおるさんがおっきくなって、あ──
怜の体の奥で、薫のペニスが膨らむ。噴き出た精液がゴムの先端をぶるりと打つ。
「んあああ!」
のけぞって怜は叫んだ。あ、ああなにこれ──
薫の先端を舐めていた奥の粘膜が精液の塊に打たれ、真っ白い快感が一気に脳天まで突き抜けた。ガクガクと体が痙攣する、止まらない、止まらない!
「あ、あああああん!」
何度も何度も、怜の体は薫から快感を受け取る。薫の腕に爪を立てて、歯をかちかち言わせながら、怜は脳みそをスパークさせる快感にひくひくしていた。触れていなかった自分の芯が、ゴムの中にどろりと白いものを吐く。
あぁ……ヤバいクスリみたい。きもちよすぎて……もっかいキメたい……。
こめかみに薫の唇が降りてくる。汗を舐められ、くすくす笑う。
「だい、じょうぶか怜」
「んふ、ねぇ薫さん」
「なに?」
両腕を伸ばして薫に抱きつき、くちゅくちゅ舌を絡めてキスをする。
「今のオレ、どうして欲しいか言ってもいい?」
「教えてくれたら嬉しいな」
微笑みながら、薫さんが聞いてくれる。あぁだいすき。
「あのね……」
薫を引き寄せ、そのペニスに手を伸ばす。ゆっくりとコンドームを引き抜きながら、耳元で甘く囁く。
「もっかい、シたい」
手の中のペニスをゆっくり撫でると、それはピクンと震え、再び上を向いた。
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