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「一緒」
リアンはつむじが見えるほど深く項垂れて、写真を眺めていた。その写真をには、去年リアンの誕生日を祝った仲間たちが写っていた。俺は後ろ手で開けっ放しだった扉を閉めたあと、リアンの隣にしゃがみ込んだ。
「俺は孤児だし、十歳からここにいて、外に知り合いもいない。クローラに乗る以外の生き方が想像出来ないんだ。なのに、引退なんてあんまりだ……」
俺は何も言えなかった。俺は入隊してまだ三年だし、外には家族も友人もいる。そんな俺が何を言っても白々しく思えて、言葉に詰まってしまった。
「シャドだって、引退したら俺のことなんて忘れるだろ?」
その言葉が胸に刺さって、ツンと痛くなった。それは俺のセリフだ。引退を機にリアンと離れ離れになるのが、死ぬほど辛い。ずっと一緒にいたい。そう思うのに、俺の口からこぼれる言葉はあまりに可愛げがない。
「んな事、ねぇけど」
「無理するなよ。シャドが好きなのは『戦ってる俺』だもんな」
「リアン……」
悲観的になっている相棒の肩を掴んだ。すると、リアンは弾かれたように顔を上げた。その顔は苦しそうに眉を寄せている。
「俺、引退したくない。ずっとここにいたい。シャドと一緒に戦いたい。そしたら、シャドはずっと俺のそばにいてくれるだろ」
「別に、戦わなくてもそばにいてやるよ」
俺は卑怯だ。本当は誰よりもそれを望んでいるのに、こんな言い方しかできない。
しかし、リアンはその言葉で満足だったようだ。驚いたように俺の顔を凝視してきた。
「本当に? ずっとだよ? ずっと俺のそばにいてくれるのか」
(重いな……。まあ、嬉しいけど)
リアンからそんな事を言われるなんて思いもよらなかった俺は、ちょっと照れてしまった。
「なんだよ、そのプロポーズみたいなのは」
茶化すつもりで言ったセリフにリアンは過剰に反応した。
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