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「家族」

「あ、そうだ!」 なにか閃いたらしいリアンが腰を浮かして、俺の方へと体を傾けた。反動で、重ねていたポラロイドの写真が、雪崩を起こす。 「シャド、俺と結婚してよ」 「……は?」 確かにこの国には同性でも結婚できる法律が制定されているが、今考えるべきことはそんな事ではなくて。 「思いつきでそういう事を言うんじゃねぇ!」 さっきまで泣き出しそうな顔をしていたくせに、リアンは俺の叫びなんて全く意に介しない。 「いいじゃん。シャドももうすぐ十八だろ。俺たち結婚できるじゃん。そしたら、ずっと一緒にいられる!」 「ちょっと待て」 (こいつの結婚、軽過ぎっ!) 「それに知ってるか? 結婚したら、俺たち家族になるんだぜ」 まるで世界の裏事情を語るようなリアンの口ぶりに、俺は容赦なく水を差す。 「知ってるもなにも、それが結婚ってモンだろ」 「そう! 俺にも家族ができるんだ!」 リアンが嬉しそうに飛びついてきた。リアンに抱きしめられ、俺は自分の心臓の鼓動が知られるのではないかと体を強張らせた。 天涯孤独のリアンにとって、家族という存在は憧れのようだった。 「俺、シャドと家族になりたい」 あまり純粋無垢な瞳を俺に向けないでほしい。思わず頷きそうになるのを俺は堪える。 (俺とお前の『一緒にいたい』は意味が違うんだよ) 「お前さ、分かってんの? フーフってエロい事とかもするんだぞ。お前、俺にキスとか出来るのかよ?」 言った瞬間に後悔した。 (なんだよ、こんな言い方じゃまるで俺がキスしたいみたいじゃねぇか)

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