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第2話
「光哉、おはよ」
「あっ……! 澄人、おはよ……」
——ああ〜〜〜今朝もまぶしいほどのイケメンだな澄人は……。アナニーしまくって寝不足の俺には眩しすぎるぜ……。
ぽん、と肩を叩く爽やかなイケメンを前にして、俺はしどろもどろになりながら挨拶を返した。
昨夜はついつい孕ませエッチ妄想が滾りまくってしまい、アナニーで盛り上がってしまった。それで俺は寝不足だ……。
朝陽に透けるおしゃれな茶色い髪の毛も、笑うたびにきらりと輝く白い歯も、俺を愛おしげに見つめる優しげな二重瞼も、全部大好き。俺より15センチは背の高い澄人の爽やかな笑顔を見上げて夢見心地になりながら、昨日のテレビ番組の感想を喋り合った。
すると、クラスの女子たちが通り過ぎざまに「君島くんおっはよー♡」と声をかけ、ついでのように「栗生もおはよー。君島くんのかげになって見えなかったわー」と1オクターブ下げた声で挨拶をしてくる。やつらは澄人の笑顔さえ拝めれば満足なので、俺は適当に片手を上げておけばいい。
——へへっ……へへへっ……この清々しいまでのイケメンが、この俺相手にあんなにも激しい種付けプレスをしていたとは想像できまい…………まあ、妄想ですけど。
愛想良くクラスメイトたちに挨拶を返している澄人の隣でニタニタ薄気味悪い笑みを浮かべていると、ふと気遣わしげな視線を感じた。
ハッと我に返って顔を上げると、最愛の澄人の心配そうな顔が間近にあって仰天する。不意打ちの近距離はあまりにも心臓に悪く、教室に到着しているにも関わらず、俺は悲鳴をあげてしまった。
「うへっ……!? な、何、なに!?」
「光哉、大丈夫か? なんか顔色悪いよ?」
「えっ……いや、そんなことないって」
「いや、熱っぽいし……。保健室、行く?」
「ひん♡」
ひんやりとした大きな手が、そっと額に当てられる。昨晩の妄想で、さんざん俺を性的に昂らせ、俺の内壁をいやらしくかき乱していた長い指がリアルに触れている。
——……どうしよう、ちょっと勃った。勃ったし……どうしよう、保健室って単語にまで興奮しちゃう……!
「熱? どーせ知恵熱だろ〜、光哉だし」だの「どーせ仮病だべー? 脇の下にカイロでも挟んでんだろ」などと言いながらのほほんと笑っているクラスメイトたちをじろりと睨め付けていると、澄人の表情が何やら険しくなってゆく。
「あれ……!? おかしいだろ光哉、なんかぐんぐん熱くなっていってんぞ!」
「あ……あー、いや、これは別に……!!」
「ほら、保健室行くぞ! 笹、たけちゃん、先生きたら適当に言っといて!!」
普段から行動を共にしている笹丘と吉竹に向かってそう言い放ち、澄人はぐいと俺の手首を掴んで歩き出した。普段は穏やかな澄人が、こうも強い力で俺の手首を握ることがあるのかと思うときゅんきゅんして、さらに興奮度が上がってゆく……。
「き、澄人っ……! ちょっ、大丈夫だって……!」
「ダメだって無理したら。ちょっとでも休ませてもらえよ」
そして、あっという間に保健室まで連れてこられてしまった。
先生たちからの覚えもめでたい澄人が事情を説明すれば、すぐに保健室で眠る許可まで降りてしまう。消毒液の匂いがする柔らかな布団に寝かされて、俺は気まずさを抱えつつ澄人を見上げた。
「……ありがと、澄人」
「ううん、いいって。おばさん仕事だよな……迎えにきてもらえそう?」
「いや……ちょっと寝不足なだけだから。寝れば大丈夫だって」
「寝不足? まったく……ゲームでしてたのか?」
「へへ〜……うん、まぁ、そんなとこ」
そっと黒髪を撫でられて、俺は多幸感と心地よさのあまりうっとりと目を閉じた。澄人はベッドサイドでしゃがみ込んだまましばらく俺の頭を撫で、やがてすっと立ち上がった。
「とりあえず俺は授業行くけど、ちゃんと寝てんだぞ? また様子見に来るからな」
「うん……サンキュ。またノート写さしてね」
「オッケ。じゃあ、おやすみ」
ふ……と優しく微笑んだ澄人の唇が、額に触れた。もっちりと柔らかなそれが額に触れた瞬間、そこから電流が走るがごとく、痺れるような興奮が全身を駆け巡る。
「ふぅ……っん……♡」
「……え?」
俺の唇から飛び出した喘ぎのようなため息に、澄人がやや面食らったような顔をしている。……俺は慌てて布団を目の下あたりまで引っ張り上げた。
「ごほごほっ!! あ、ごめ……ちょっと、びっくりしちゃって……っ……!!」
「あ……あっ、急にキスなんてして、ごめんな。じゃあ、また後で」
気恥ずかしそうに頬を染めた澄人がカーテンの向こうに消えてゆく。……本当はびっくりしたわけじゃなくて、ただ単に澄人の唇の柔らかさに興奮してしまっただけなのだ。
澄人のああいうウブなところも可愛くてたまらないし、弱った恋人にキスのいたわりを与えてくれる優しいところも、本当に大好き。身悶えたくなるほどにいじらしい恋人を、抱きしめたいけど抱きしめられないもどかしさよ……。
——あ……そうだ。ちょっとだけ夢小説読み返して、気持ちを宥めてから寝よう……。
ごそごそとポケットからスマートフォンを取り出して、普段文章作成に使っているアプリを開く。そこに保存されている夢小説一覧を指先でスクロールし、今の気分に合いそうなものを探してみた。
「保健室で……ってのはないなぁ、今度書かなきゃ。お、『誰もいない教室で』ってのがあるじゃん」
これは確か、暮れなずむ夕方の教室で、澄人から激しく求められる話だ。
俺は水泳部に所属しているのだが、『いやらしい乳首を他の男の目に晒しやがって……!』と激昂した澄人に、教室の机の上で脚を開かされ、ガツガツお仕置きエッチをされてしまう……という夢シチュを描いたエロ話である。
俺が小学生の頃から水泳を続けていることはもちろん澄人も知っているし、なんなら試合の応援に来てくれたこともある。なので現実的に考えれば、突然『いやらしい乳首を〜!!』といった怒り方などするわけがない。それに、大の男子高校生が机の上で大股開き……というのも、安定感的に多少無理があることは否めない。
だが、夢小説はどこまでも自由なのだ。何でもありだ。
””
『あん、あんっ、あん……♡』
じゅっぽじゅっぽと俺に剛直をねじ込みながら、澄人はきつくきつく俺のいやらしい乳首をつねり上げた。気持ちよくて気持ちよくて、きゅうううんと内壁で澄人を締めつけてしまう。
『ひぃ……ン♡ いたぁっ……♡』
『そのわりには、ナカめちゃくちゃ締まってるじゃん。こういうのが好きなんだろ? ドスケベ光哉』
『んんっ……♡ 好き、好き……いやらしいちくびで、ごめんなさい……!』
『今日は中でたっぷり出してやるからな……!! 全部、受け止めろよ……!!』
『うん……!!』
パンパンパン!! と夕暮れ時の教室に激しく響き渡る淫らな音が——……””
——……ド攻めの鬼畜澄人も最高だなぁ……はぁ、いい夢見れそ……。
ゆっくりじっくりと自分で書いたエロ夢小説を読みふけるうち、俺はいつしか、うとうとと夢の世界へと誘われていた。
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