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第19話「興味ねえから」*大翔

「そろそろ帰ろっか」 「……そうですね」  ――――……確かにちょっと、考える事が多すぎて、疲れた。  会計を済ませて、店の外に出ると、先輩のスマホが音を立てた。 「――――……あ、ちょっとごめん」 「はい」 「……あ、真斗? ごめん、電話気づかなかった。店の音楽がデカすぎて。 ……え。こっち、来るの? 泊るの? あ、分かった。オレ今、駅の近くに居るから――――……じゃあ改札で待ち合せしよっか。ん。今から行く」  そんな会話をして、すぐ電話を切った先輩、オレを見上げてきた。 「四ノ宮、ごめんオレ」 「ここで解散にしましょ」 「あ、うん。 ごめんな」 「もともと帰ろうって言ってたんだし、全然」  そう言うと、先輩は、ふ、と笑んで、オレを見上げた。 「ん。じゃあまた来週、学校でな」 「はい」  先輩は、にっこり笑って。  それから、ふとオレを見つめた。 「――――……なんか昨日、見られて良かったかも」 「……は?」 「ブラック四ノ宮、面白いかも。 なんか、得体知れなくて怖いなーって言うのがなくなって、すげえすっきりしてる」  嬉しそうに、面白そうに笑って、そんな風に言ってくる。 「ブラック四ノ宮って何ですか……?」 「だって普段、ホワイトって感じだから。対比してみた」  ふ、と瞳を細めて笑う。  ――――……ほんと、綺麗な顔してンな、この人。  そりゃ、女にも男にも、モテるだろうけど――――……。  1回限り、か……。 「じゃあ、行くね。 おやすみ、四ノ宮」  そう言って、バイバイと手を振りながら、駅に向かって走り去っていった。  ――――……その後ろ姿を見送って、オレは、ふう、と息をついた。  なんかほんと。  ――――……疲れたな。色んな意味で。  つーか。  今から男と会うのか。泊まりで?  ――――……でも恋人はいらないって言ってたし、店とかで知り合う奴と1回限りって言ってたし、て事は、今から会う奴とはしねえのかな。  …………は。関係ねえ。 考えなくていいや。  まだ20時過ぎか。  ――――……誰か、誘うか。  スマホを取り出して、誰かに連絡を取るか、少し考えたけど。  気が乗らなくて、やめる事にした。  明日は実家の方に行かないといけないし。面倒くせーけど……。  もう今日は帰って休むことにしよ。  スマホをしまって、駅の方に向かって歩き始める。  ここから駅を越えて逆方向に、オレの住むマンションがある。  決して、先輩が誰と会うのかが気になる訳じゃないし。  心の中で何故か言い訳をしながら、駅を通り過ぎる。  誰かと待ち合わせた先輩に、会うかなと思ったけれど、駅では会わなかった。  ――――……まあ別に。興味ねえから、良いんだけど。

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