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第31話「変な縁」*大翔

 気分が悪いから、シャワーを浴びた。  すっきり――――……したはずなのに、まだダメだ。  ……体が痛いって、マジでそういう理由なのかな。  そういうコトが原因で痛いなら、あんな風に普通に言うか?  違うんじゃねえかなとも少し思ったけど――――……。  ムカついて聞かずに帰ってきたら、ますます、ムカつきばかりが増していく。  会うか。  隣に居るんだし。  ……アイスくれるっつってたよな。  ――――……スマホのゼミのグループから、先輩の連絡先を、個別に友達登録した。一瞬躊躇うけれど、このモヤモヤを排除しないと、安眠できそうにない。 こんな事、何で気になるんだとも、死ぬほど謎だったけれど。  覚悟を決めて、通話ボタンを押した。 『もしもし?』 「あ、先輩ですか?」 『うん』  呑気な声色。  あほらしくなってくる。  が。  やっぱり気になるものは気になる。 「あの……」 『……うん??』  少し沈黙してしまう。なんか――――……このセリフ、絶対言ったら、笑われそうで。 でもそれ以外に用事もない。 「――――……やっぱり、アイスもらえますか?」 『え?』  すぐに、ぷ、と吹き出す先輩。 『急に電話してくるから、何かと思ったら――――……』  クックッと笑われて。 『アイス、食べたくなっちゃったの?』  めちゃくちゃからかうように、そう言われる。  ――――……絶対こうなるとは思ったけど。  ムカつくなー。くそ。  少し沈黙した後。 「オレ普段あんまり食べないんで、家には無くて」  家にアイスはあるけれど。  もう、そう言うしかない。 『うん、いーよ、取りに来なよ。好きなの選んで――――……つか、コーヒー淹れてるし、食べにくる?』 「コーヒー?」 『いつも多めに淹れちゃうから、四ノ宮の分もあるよ』  玄関先で聞けるか疑問だったので――――……その申し出は、ラッキーだ。 「――――……ほんとに、行っていいんですか?」 『うん、別にいーよ』  一昨日、話すまで、オレの事をうさんくさいって思ってたくせに。  ……家に来ていーよ、とか。 ……信用しすぎ。  ほんと。……人が良いな。  騙されそうで――――…… なんかすこし、気にかかる位。 「じゃあ……行きます」 『うん。すぐ来る?』 「シャワー浴びたとこなんで、髪乾かしたら行きますね」 『ん。コーヒーって、ブラック?』 「はい」 『じゃあ待ってる』  通話が終了すると同時に、スマホを置いて、ドライヤーをかける。  これでその件、確認できたとして。  部屋に来てたあのイケメンと、ヤりすぎて体が痛いとか、平然と言われる可能性もある訳で。  …………そしたら、どうしてくれよーか。    ……って、どうもできねーけど。  ……関係ねーし。  髪が乾いたのですぐに、鍵とスマホだけ手に取って、隣の部屋に向かう。  チャイムを鳴らすと、鍵が開いて、先輩が顔をのぞかせる。  ――――……隣に、この人が居るって事、入ってくとこも見たし、分かってはいたんだけど。  迎え入れられると、ほんとに居るんだな、なんて改めて思った。  ……変な縁。      思いながら挨拶をして中に入り、部屋の感じを見ると、間取りは一緒。ただ黒っぽいオレの部屋と違って、なんだかやたら明るい。白基調の家具だと、こうなるのかと、興味深く見回した。  なんか、すげえ、この人っぽい部屋。  ゲイだって事だけはひたすら隠してるけど、それ以外は駄々洩れで、意見とかも、ものすごいまっすぐ。  まわりの人らが、皆そろって、この人を可愛がってるのは知ってる。  ゼミの教授や、世話に来る3,4年生、先輩の同学年たち。  大学でたまに見かける時も、人に囲まれてて、心底楽しそうな感じで笑ってる。  顔はほんと――――……よく見るアイドルなんかより、よっぽど可愛いんじゃねえかなとは思う。それが、あんなに楽しそうに笑ってれば。そりゃモテるだろうなとは思うし。  ――――……だから、ゲイだとか。恋人要らねえとか。一夜限りとか、女の子無理とか。  そんな、人に言えないような暗めの部分があるなんて思いもしなかったし。  そうと知ってからすら、この人を見てると、そんな部分があるようには見えない。

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