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第37話「ひどいなー」*奏斗
触れられたくない事は回避して、四ノ宮の実家の事に話を振って、色々話を聞いてみると、テレビとかに出て来そうなお屋敷っぽいって事が分かった。
葛城さんはそういう所の執事。それをカッコいいなと言ったら、好みかなんて聞かれた。
……で、オレは――――……。
「女の子が好きだって全員が対象になる訳じゃないだろ?」
とか、そんな風な、ものすごく意味の分からない弁明をしなきゃいけなくなったりして。
どんだけオレが、ふらふらしてると思ってるんだ。
全部の良い男を対象にしてるとか、思われてるんじゃないよな??
どんなイメージだよ、もう。
がっくりしてしまいそうになりながら、話していたら、なんか。
四ノ宮の家って、ちょっと大変そう、と思ってしまった。
お姉さんがいるけど、長男で、会社いくつもお父さんがやってて、家も継ぐのかな? 結婚すすめられるって。まだ20才にもなってないのに、どんだけ……。
――――……そういう中で、自分を出さずに来たのかなあ?
だから、四ノ宮って、こんな恵まれた要素だらけな感じなのに、ちょっと歪んでるっぽいのかな。
ちょっと可哀想な気が……。
自由にのびのび生きさせてあげたくなってしまう。
……ちょっと……というか、かなり。
散々、怖いとか、うさんくさいとか、思っててごめんな??
と、心の中で、謝りつつ。
こんな夜に、何だか急に距離が近づいてる気がする四ノ宮と。
色んな話を続ける。
話してると、たまに笑うけど。
――――……それよりも頻度多く、ムッとする。
でも、なんだかずっと微笑んでた今までの四ノ宮と比べると。
なんか、ほんとに、すげー可愛い。
と思ってしまう。
この黙ってムッとする理由が、口に出るようになったら、
なーんか、すげー面白そう。
なんて思いながら、目の前の整った顔を見つめてしまう。
ほんと、整ってんなー。
今まで怖いと思ってたから、なるべく近づかないようにしてたから、こんな風に顔を眺めた事が無かったけど。
まあ。外見だけなら間違いなく、トップクラスのイイ男だな。
クラブで会ったら、関係もってるかも。もちろん、1回だけど。
とか口に出したら、もう間違いなく、誰彼構わず狙う変態と確定される事を思ってしまったけれど。
……絶対言わないし。
……ていうか、オレ、日常が絡む知り合いとは絶対に寝ないから、この関係で出会った以上、絶対無いけどねー……。
なんて思いながら、話してる内に、一緒に映画を見る事になった。
映画館で4回、家でも何回も。オレが人生で一番多く観た映画を、四ノ宮も好きだと言ったから、一緒に見る?と聞いたら、そうなった。
オレ達って、コーヒーの好みも、映画の好みも似てるのかな? 他に何観てるんだろう。もしかして、すごい気が合う友達みたいになっちゃったりするのかな、これから。家隣だしな。
一緒に好きな映画とか、観るようになったりするかも??
……んん、でもなぁ。
……まあ今の所。
仮面を外したら、大体仏頂面の四ノ宮とそうなれる気はしないけど。
……仮面付けてないと、笑えないのかな?
それとも、オレと話してると、なんかちょくちょく不快なことがあるんだろうか。
よく分からん。
四ノ宮が居れば泣かないでいられるかなあ?とか思いながら映画を観始める。毎回泣くので、一応ティッシュはさりげなく隣に用意しながら、映画を観ていたのだけれど。
やっぱりいつも同じシーン、同じセリフで、やられる。
一応我慢しようと、ちらっと思ったのだけれど。
無理だった。
ぼろぼろぼろっ、と流れおちた涙に。
四ノ宮がおもいっきりオレを見てる視線を、感じる。
……そんなに見なくてもよくない?
ちら、と四ノ宮を見ると。
全然泣きそうな気配もない。
ていうか、ここで泣かないで、お前何のために観てんの?と、思ってしまうレベルで平気な顔してるし。
「……っ……ていうか、泣かないの?」
「――――……もう何回も見てるんで……」
「何回見てても泣けるだろ……」
ダメだ、もう。
ティッシュで涙を拭きまくっていると。
四ノ宮、何も言わず、固まってるし。
ていうか、こういう時は、大丈夫ですか、とか、なんか、笑ってくれてもいいけど、なんか普通しゃベるだろ。
お前、普段気を使わなくてもいいけど、最低限の気は、遣ったら?
絶対いつものいい奴のお前なら、ティッシュをわざわざ抜き取って、それを差し出してくれながら、何なら、よしよしでもしてくれそうな感じがするのに。
ちょっと変わりすぎじゃない?
と。再び振り返ったら。
なんか。
よく分かんないけど、ものすごーく、眉が寄ってて。
え? なんでそんなに険しいの?
逆におかしくなって、泣いてるのに、笑ってしまった。
「泣くの我慢してる?」
て聞いたら、
「うるさいですよ、前向いてください」
うわー。
何な訳、その言い方。 ひどいなー……。
……もういいし。
映画観るし。
四ノ宮から視線を外して、テレビの画面に向かう。
向かってしまえば、四ノ宮の事は忘れて。映画に没頭。
所々泣きながら。
2時間、見終えた。
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