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第38話「運命的な」*奏斗

 ――――……余韻にじーんと浸りながらエンドロールを見終えて。  ふと、四ノ宮を振り返ってみると。  なんだかとっても無表情。 「……泣いた?」 「――――……いえ」 「泣かないの?」 「……人が居ると泣けないです」  そう言われて、はた、と固まる。  うわー……。  なんか、四ノ宮、めっちゃくちゃそれっぽい。  よく考えなくても、そういうタイプじゃんか……。 「あ……ごめんな?」 「え?」 「貸してあげればよかったね。明日観るなら持って帰っていいよ」 「――――……」  ふ、と。  なんか、今度は、少し、笑った。 「――――……」  今の笑った感じは、結構良いかも。  嘘っぽくなくて。  ――――……自然と、笑ったって感じ……。  ……何で笑ったのかな? 貸してあげるっつったから???  「――――……いいです。細かいとこは思い出せたんで」  その返事を聞いて頷きつつ。  オレは、んー、と考えながら。 「なあ四ノ宮?」 「はい?」 「……素を出しても、お前からそんなに人、離れないと思うけど」 「――――……」 「離れる奴は、それでいいじゃん?と、ちょっと思ったんだけど……」  あ。  ……すげえ固まってしまった。 「あ。ごめん……余計な事……だった?」 「――――……先輩がゲイっていうの言っても、人、そこまで離れないと思いますけど」 「――――……」  えーーーと。  ……これは。  …………余計な事言ったから、ちょっと怒って、そのまんま、返されちゃった感じなのかな……? 「……ごめん、今の無し。 ……隠したい事、それぞれ違うよな」    地雷がどこか分かるまで、余計な事言うのやめとこ……。  反省しながらも。  これだけは言っておこうかなと思って、四ノ宮を見つめた。 「とりあえずオレは、お前の素がどんなでも、居るから安心して」 「――――……」 「協定結んだもんな」  さっきも言った気がするけど、とりあえずもう一度改めて。   そう言って、まっすぐ見つめた。  ……ちょっと性質の悪い、弟が出来たと思って、頑張るから!  真斗よりだいぶ、癖が強い気がするけど。  ……と、心の中だけで、つぶやきつつ。  何となく自分の中で、決意を新たにする。  ……何でこんな決意してんだって、ちょっと自分でも可笑しく思わなくもないけど。  あの時、ホテルで見られて。  そいつの家が、隣だった、とか。  しかも、3か月近く会わなかったのに、あのタイミングで、遭遇するとか。  もうそういうのって、ある意味運命的な物なんじゃないかって、思ってしまう。      ――――……なんか。    こいつが、少しは素が出せるように、楽になれるように。  オレが大学で関わってあげられる間に、  少しでも楽にしてあげられたらいいなあ。  と、思ってしまったんだから、しょうがない。  なんか、顔見てると、めちゃくちゃイケメンなのに。  皆に完璧な王子とか思われちゃってるのに。  ……ていうか、思われてるから余計にこうなってんのかな。  何とも言えない複雑な想いで、その顔を見つめてしまった。  

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