46 / 542

第47話「謝りに」*奏斗

 ちょっとびくびくしながら、隣の部屋のインターホンを押す。  怒ってるかな……。  ピンポーン。 「――――……はい」 「オレだけど」  すぐに、ガチャ、とドアが開いた。 「四ノ宮、さっきごめん。 救急箱、ありがとう」 「ああ。――――……どーも」  一生懸命、普通の笑顔で言ってみる。けど。救急箱を受け取った四ノ宮は、無言。  そのまま、ドアが閉まりそうな雰囲気すらある。 「あ、のさ」 「――――……」 「さっき、ごめん。ちょっと狼狽えすぎたかも……」 「――――……何があったんですか?」  それは、ちょっと、口にしたくない。  ――――……忘れたい。  思って少しだけ黙ってたら。  四ノ宮は大袈裟にため息をついた。 「……もういいですよ。救急箱、ありがとうございました」  そう言って、なんだかすごく、冷たい瞳をした四ノ宮に。  ドアを閉められてしまった。  ちょっと、びっくり。  うそだろ。――――……こんな事する人、居るの?  う、わー……。  よく分かんないけど……。  …………怒って……るのかな?  どうしようかな。  目の前で閉じたドアを見つめたまま、1秒、2秒、3――――……。  がちゃ、と。ドアが開いた。  呆れたような顔の四ノ宮が出て来て。 「――――……何で帰らないんですか」 「いや……なんか――――…… びっくりして」  そう言ったら。  四ノ宮は、はー、とため息をついた。 「……話す気、ないんでしょ?」 「――――……」 「……なら帰ってください。オレ、ゼミの課題やるんで」 「――――……」  また閉まった。  今度は、もはや話さない自分が悪いのかと思って、仕方ないから帰ろうかなーと、思った瞬間。  また、ドアが開いた。 「…………っ……入りますか?」  なんかものすごく嫌そうな顔で、誘われても……。 「でも鍵かけてきてないし…… ゼミの課題……するんだろ?」  それに、顔……。ものすごい嫌そうだし……。 「……イライラして無理。鍵持ってきて、うちに入って」  ――――……イライラ、して?? んそんなに怒ってんの?? なんで?  その言葉が謎すぎて、首を傾げたけれど。  むっとした顔で見下ろしてる四ノ宮に、まあこれ、きっとオレのせいだよなと思って。うん、と頷いた。 「すぐ来る」  そう伝えて、自分の部屋に帰って鍵を手に取った。  ドアの外に出て、鍵を閉める。    四ノ宮の部屋のチャイムを鳴らそうとした瞬間。  ドアが開いた。 「どーぞ」 「ぁ、うん」  さっきよりは、顔、マシ。 「お邪魔しまーす……」  今度はオレが四ノ宮ん家入るのか……。  なんかほんと――――……急激に距離が近くなってて、ちょっと不思議。  確かに間取りは同じみたい。でも、全然違う。 「家具とかで、ほんと全然雰囲気違うんだなー……同じ間取りと思えない」 「ここ、葛城が人に任せてやったから」 「だからなんかモデルルームみたいなのかー。生活感ないなあ?」 「そうですか?」  あ、でも、窓から見る景色は、やっぱ隣だからほとんど変わんないなあ。  なんて思ってたら。 「そこらへん適当に座ってください」    そう声をかけられたので、うん、と返事をして、ソファに浅く腰かけた。  目の前のローテーブル。ガラスでオシャレ。  ――――……こういうの、ちゃんと掃除してんだなあ。してないと埃たまるやつだよなー。  四ノ宮って……マメ? ていうか、潔癖症かなー。綺麗すぎ。  ……まあ、学校に居る時も、なんか、清潔感、半端ないもんなー。  こういうとこから滲み出てんのかな。うん。  そんな妙な納得をしながら、部屋を何となく観察してしまう。  

ともだちにシェアしよう!