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第52話「翌日」*奏斗

 昨日の夜は、少し遅くなったけど――――……。  疲れたからか、よく眠れた。  ちゃんと朝から大学に来てて、今お昼。  何も知らない皆と楽しく話してる時は、全然大丈夫。  ――――……そう思うと。  四ノ宮には結構色々話しちゃったから……感情が、全部、隠せず出ちゃったのかな、とも思う。  ほんのわずかな間に。  ――――……なんか、四ノ宮に……気を許しちゃったのかなとも。  でも迷惑だよな。  もっと、ちゃんとしないと。  ――――……今日、謝りに行こうかな。  ……昨日のこと。   「おーす、ユキ、元気?」 「んー、おはよ」  元々2限が一緒だった皆と食事していた所に、また別の友達たちも寄ってきて、適当に周りに座っていく。 「あー、オレ、ユキみたいな顔だったら良かった」  急に、すぐ後ろに座った|芳樹《よしき》にそんな事を言われて、ん?と見つめ返すと。  その隣の|将太《しょうた》が、苦笑い。 「昨日、芳樹さ、気になる子とデートしたらしいんだよ」 「うん、それで?」 「歌手の|涼《りょう》くんが大好きって、ものすごい言われたんだって。アイドルみたいな顔の奴」 「うん……?」  何それ? どーいうこと?  首を傾げると。 「そんな強調するってことは、オレなんかタイプじゃないってことだよな……」  そんな風に落ち込む芳樹に、将太が、「朝からずっとこれでさ」と笑う。 「えー……? それは、分かんないんじゃない?」  こっちまで苦笑いになってしまう。 「ほんとにその歌手が好きだってだけの話だったら、付き合うのとかには関係ないよね?」 「でも、初めて2人でデートした日に、そんな事ばっか話すかー?」 「どんな話の流れで、その話をしてたかによるよね?」  クスクス笑いながらそう言うと。 「好きなものとか何?って聞いたら、涼くんがって話し出して」 「芳樹から聞いたんじゃんか。別にカッコいい奴が好きだからって、それと付き合いたいとかじゃないんじゃないの?」  そう言って、なだめようと思ったのに。  不意に、頬をむにっと挟まれた。 「この顔だったら、どんな話題だろうが、告白できたのにー」 「……っいただだ……」 「やめろよ、ユキがかわいそうだろ」  将太が、芳樹をはがしてくれて、席の方に引き戻してくれた。  オレの隣に座ってた、小太郎が苦笑いしながら、オレの顔を見て。  肩をポンポンと叩く。 「大丈夫か、ユキ……つか、赤くなってるし! アホ芳樹、やめろよなー!」 「あ、ごめん。つい、顔見てたら、アイドルが憎くなって」 「オレ、アイドルじゃないっつの!」 「アイドル顔じゃねーか!」 「何だよ、アイドル顔って」  もー、とため息を付きながら、持ってたおにぎりをぱく、と食べて。 「ていうか、告白とか、しなかったの?」  芳樹に聞くと。 「だって、遠回しに断ってきてんのかと思ったからさあ。――――……はー、飯買ってくる」 「んーいってらー」    ため息つきつき、将太と消えていく芳樹を苦笑いで見送る。 「ユキ、災難だったなーー」 「アイドル顔ムカつくとか、笑える」  まわりの奴らがそんな風に笑う。苦笑いで返しておいて、水を飲みこむと。  隣で小太郎が急に話題を変えてきた。 「なあなあ、ユキ、ゼミの課題やった?」  そう言った。 「んー、まだ途中」  昨日投げ出して、クラブいっちゃったからなあ……。 「さっき翠とも会ってさ。今日の4限が終わったら、ゼミのメンバーで図書館に行こうって言ってんの。資料もって帰んのも重いし、その場でやろうって。しかもしんどいから、相談し合おうぜって」 「4限の後かー……」  四ノ宮に謝りに行きたいけど――――……。  まあ、そんなに遅くならなければ、謝る位出来るか。 「うん、いーよ、やろっか」 「OK、じゃあ他にも終わってなさそうな奴に声かけてみる」 「うん」  頷いて、サラダを箸で食べ始めたところで。 「あ、四ノ宮ー!」  隣で、小太郎が、おっきな声を出した。 「――――……っ!」  噛んでたサラダ、変に吸い込んで、むせる。

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