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第54話「不思議な」*奏斗
結局あの後、小太郎は、ゼミの皆との連絡グループに、「一緒に課題やりたい奴4限終わったら図書館。来れる奴だけ返事して」と入れてて。7人集まることになった。
4限が終わって、一緒だった小太郎と翠と図書館に向かう。
うー。
憂鬱すぎる。
皆の前で会いたくないな。先に2人で、話したかった。
図書館は、1階と2階に本があって、2階の奥に、こういう時に使う、机が置いてある部屋がある。図書館の方で本を借りて来て、ここで話しながら勉強が出来る。一部屋取って、中に荷物を置いて、本を探しに行く。
まだ四ノ宮、来てない。
――――……どうしよう。
入口で待ち伏せして、どっかで話してから、皆の部屋に行こうかな。
でも今、オレが入り口で待ち伏せしに行く理由がないんだよな……。
どうしよう。
「ユキ、本まだ探す?」
「あ、もう見つけたの?」
「とりあえずこれで考えてみる。先戻ってるぞー」
皆が戻って行って。あ、チャンスなんじゃ。四ノ宮がここに入る前に捕まえて……。
入口の方に急ごうと思った瞬間。ぐい、と腕を掴まれ、引かれた。
「え」
びっくりして、オレを引いた奴の顔を見ると。
「あ。しの、みや……」
「あ。すみません。話しかけようとしたら、すげえ走りだしそうだったから」
そう言って、四ノ宮はオレの腕を離した。四ノ宮はふと周りを見てから。
「……先に話したくて。イイですか?」
そう言った。
オレに向ける表情に、もう、嘘っぽい笑顔はない。
むしろ仏頂面だったり。ムッとしてたり。なんか無表情になったり。
「――――……」
ふ、と微笑んでしまう。
「うん。ていうか、オレ今、お前を捕まえに行こうと思って歩き出そうとしてたんだけど」
「――――……何でですか」
「……謝んないと、と思って」
「――――……昨日のは、先輩は悪くないです」
「いや。悪いよ。――――……心配してくれてるって、ちょっと考えれば分かる事なのに…… オレが、勘違いして……」
「――――……」
「危ない、とか。そういう意味でいったんだろ?」
「……そうですけど、言い方が悪かったと思って」
「……違う、オレのメンタルが、ちょっと普通じゃなかっただけだから……ごめんな?」
そう言ったら、四ノ宮は、無表情ではあったけど。
――――……少し、ほっとしたような表情を見せた。
「……じゃあ――――……仲直り、で、いい?」
そう言ったら。数秒真顔で、固まられてしまう。
「え。何? だめ?」
「あ、いや……仲直りって――――……ガキっぽいですけど……」
そんな風に言って、口元押さえて、顔をそらされ、苦笑いされる。
「つか、お前、そーいうとこ良くないぞ。 ここは、笑わないで、イイですよっていうとこなんじゃないの??」
なんか気恥ずかしくなってきて、そう言うと。
四ノ宮は、またぷ、と笑って。
「……良いですよ、じゃあ。 オレも、すみませんでした」
「ん。じゃあ――――……課題、やろっか」
「そうですね。向こうの部屋ですか?」
「うん。あっち。行こう。なんか小太郎は、お前の着眼点を頼りにしてるらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「うん」
「教えてやろう的じゃなかったですか?」
「うん。オレもそう思ったけど……」
言いながら苦笑いしたオレに、四ノ宮は肩を竦めた。
「面倒だなー……帰ろうかな」
「ええ? やろうよ、一緒に。お前帰ったら小太郎がショック受けるし」
笑いながらそう言うと。
四ノ宮は、ふー、と息を付きながら、頷いた。
「……行くって行っちゃったし。しょーがねーから行きますよ……」
その言い方に、小声で、笑ってしまう。
「はは。そういうブラックなとこ、出せばいーのに。面白いから」
そう言ったら。
「めんどくせえし――――……先輩の前でだけですよ」
そんな風に、四ノ宮が言う。
ブラックなのがオレの前だけって。
それってどうなの。
と思いながらも。
何かちょっと、嬉しいような、変な感じがして。
あ、とりあえず仲直りできて、良かった。
四ノ宮も、皆のとこ、行く前に、オレのとこにきてくれたんだなと思ったら、またそれも嬉しいような。
不思議な気分だった。
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