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第55話「キスマーク」*奏斗

 ――――……とりあえず、良かった。  仲直り。出来て。  気まずいの、やだもんな。  ……家、隣だし。  それに、協定結んだし。ブラックでも四ノ宮から離れたりしないって言ったし。  ホッとしながら、部屋に戻った所で。  あ、オレ、まだ本借りてなかった、と気付いた。  小太郎達に、何してんのと笑われながら、すぐまた本棚に戻る。  本を選んでると、荷物を置いた四ノ宮もすぐにやってきた。 「他の1年は?」 「来ますけどまだみたいです」 「そっか」  そう返事をして、いくつかめぼしい本を開いていく。 「そこら辺の本使えそうですか?」 「んー……こっちか、その上、か……」  見上げて、指さした時。  なんか視線に四ノ宮を見上げると。 「――――……ん?」 「……いや。 何でも、ないです」 「なに?」 「いや……」  変な受け答えに首を傾げつつも、四ノ宮が上の本棚を見上げるので、一緒にまた見上げる。 「とりあえず、四ノ宮、オレ、先戻ってるねー」 「……あ、はい」  本が決まったので、四ノ宮を置いて先に部屋に戻って、翠の隣に座った。  後から来たメンバーも皆本を何冊か持ってきて、座った。  一緒に課題をやろうと言っても、グループじゃなく個々での提出なので、基本は1人で。悩んで来たら助け合うスタンスでやろうって事になった。  こんなに人数居て集まってんのに、嫌と言う程、静か。  しばらく本と睨み合って、ノートにまとめながら過ごした。 「あー……ちょっと、疲れた……」  皆の邪魔にはならないように、目の前に座ってる小太郎に、小さく言って、前の机に倒れた。  ちょっと疲れてた何人かが、オレに付き合って、ふ、と力を抜いて笑う。 「疲れたね……」  言いながら、倒れたままクスクス笑ってると。  隣にいた翠が急に。 「ユキ、なんか、ここ赤いよ」 「え? どこ?」 「ここらへん」  触られたとこ。服で、ギリギリ隠れるあたり。  身に覚えがあって、心の中だけで、やば、と思いつつ。 「……なんだろ」 「何か刺された? かゆい?」 「いや、別に……」  そのあたりを思わず隠しながら、すっとぼける。 『ごめんね、アトつけちゃったかも……キスしただけなんだけど』 『え。どこ?』 『服で隠れるかな』 『ああ……もともとアトつきやすいから、気にしないで。大丈夫だと思う』  そんな昨夜の会話が思い出される。  変に倒れたから、翠にみえちゃったんだな……。 「ユキに恋人が居たら、キスマークかってツッコむとこだけどな……」  小太郎が笑う。 「居ないの知ってるだろ」 「まあね……」  怪しまれないように、即座に返す。 「あ、そうだ。合コン、行こ、ユキ」 「合コン?」 「高校ん時の友達とさ、今のお互いの知り合い連れて、合コンしようって言ってんの。ユキ連れてけば、喜ばれる。女子には。 男子には怒られそうだけど」  ぷ、と笑いながら、小太郎が言う。 「あ、来たい奴居たら、連れてくから言ってー。男女問わないよ」  そんな小太郎のセリフに、皆、しかめ面を解いて、ふわ、と笑う。  良かった。  キスマークの話題から、もうすっかり合コンの話にシフトした。  サンキュー、小太郎。  心の中で礼を言いつつ。ちょっと首筋、さりげなく隠して、また本に向かおうとしていると。 「四ノ宮、合コン行きたい?」  ……つか、小太郎って、ほんと四ノ宮好きだよな……。  なぜ巻き込む……。そうだった、王子大好きだった……。 「オレ、学年違いますけどいいんですか?」 「お前連れてったら、すげー手柄になりそうだから」 「何ですか、それ」  四ノ宮は、ふ、と微笑んでる。 「いつなんですか?」 「今週の金曜」 「あれ、でもゼミのまま食事にいかないんですか?」 「今週も先生が用事があるから、無しだって。もう先週確認してあるんだよ」 「ああ…… 考えておきますね」 「ん、前向きにな? てか、皆空いてたら皆でいく? 恋人居ないの誰だったけ?」  とか皆に聞きだしてる。 「あ、ユキは参加な?」 「え、何で、オレ参加確定?」  小太郎の言葉に苦笑いしていると。 「何でお前彼女居ないのかわかんねーけど、大学入ってから居ないだろ? 行こ?」 「あー……うん。そうだね。行こうかな」  まあ。別にオレ、女の子と絡むのは、嫌いじゃない。  ……女の子、嫌いじゃないし。ていうか、可愛くて、明るくて、好きだし。  ま、いっか…… この流れで、断るのも、めんどくさい。 「じゃそういうことで。さて。続きするかー。あ、なあ、今聞ける奴だけでいいから、コレの考え方、どう思う?」  小太郎が自分のまとめたのを読みながら、顔を上げてる皆に対して意見を聞きだして。  そしたらそっから、討論会みたいになっちゃって。  脱線しまくりの色んな話に飛んでいき。  結構な時間、皆でそこで話し合う事になった。

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