結局なんだかんだと遅くまで図書館に居て、そのまま駅前のファミレスで皆で夕飯を食べた。 「じゃあお疲れー」 　ファミレスの前で、お開きになる。 　オレと雪谷先輩以外は電車なので、そこで別れようとしたら。相川先輩が。 「四ノ宮もそっちなの？」 　そう聞いてきた。「はい」と答えると。 「ユキと同じ方向なの？」 「はい」 「じゃあ護衛してやって。遅くなっちゃったし」 「つか、小太郎、オレ、男」 「いや、ユキは危ない」 　相川先輩の言葉に、周りの人達も、うんうん、むしろ女子よりヤバいかもしれない、とか言って、先輩をちょっと怒らせている。 「もういいわ。四ノ宮、行こ」 「あ、はい」 「じゃーなー。四ノ宮よろしくー」 「うるせーよ、小太郎！」 　懲りない相川先輩に、雪谷先輩が苦笑しながらそう言って。 　皆とは、別れた。 「先輩って、変な人に付きまとわれた事とか、あります？」 「……お前まで、何を…………」 　ものすごい嫌そうな顔で、オレを見てくる。 「ないんですか？」 「無いよ」 　無いのか。 　……気づいてないのか。 　この顔で、今まで大丈夫だったのかなあ。 　……まあ、本人がないって言ってるってことは、とりあえず実害はなかったってことだろうから、良かったけど。 「四ノ宮は無いの？」 「え？」 「付きまとわれた事とか」 「……誰にですか？」 「えー。振った女の子とかさー？」 「何だそれ……無いですよ」 「あんまり女の子、冷たくしちゃダメだぞ？」 　何だそれ。 　何の忠告だよ。 「オレ、全然冷たくなんてしてないですよ」 「でも、告白、断りまくってるって聞いたけど」 「誰にですか？」 「今日、お昼一緒に食べてた奴ら」 「その人達は何で知ってるんですか？」 　そう聞いたら、えー何で？　と少し考えてから。 　先輩は、あ、そうだ、分かった、と笑った。 「オレの友達のサークルの1年の子が、お前のファンらしくて、そこからの情報らしいよ」 「へえー……」 　そんな変な繫がり情報とか、マジでいらねえな。 「ていうか、先輩こそ、モテるのに彼女作らないって、有名ですけど」 「はー？？」 　ものすごく嫌そうな顔をして、オレを見上げてくる。 「何それ有名って。どこで有名なの？」 「オレ、何回か聞いた事ありますし。かなり有名なんじゃないですか？　ていうか、先輩、目立つし」 「……ていうか、オレの100倍位目立つ奴に、言われたくないんだけど……」 　何言ってんだろ、お前……と、先輩は、隣で首を傾げてる。 「まあ、オレは、さ。彼女居ない理由は、お前は知ってるじゃん？」 「……まあ、そう、ですね」 「でもさー、お前が居ない理由は？？」 「――――……別に……そんなに欲しいと思えないから」 「ふうん。そっかー……素を出したくないから？」 「……まあ、面倒だっつーのが一番ですかね……」 「ていうか……何度でも言うけど、ブラックでも、モテると思うよ？」 「……いいです」 　……元々は、別に本当の気持ち、隠してなかった。 　隠してなくても、勝手に作られる理想で好きとか言われて、実際よくよく知ると、外見と違うとか言われて。 　こうしてこの事について先輩と話してると、話すたびに、自分が考えてる事が少し、整理されてくる。 　その理想に合わせるのが面倒くさいっていうのが、一番な気がしてくる。 　――――……理想とか勝手に作らず、隠してるのに、そっちを見てきたのは、あんただけだし。 　作ってた理想像を、うさんくさいとか言ってきたのも。あんただけで。 「――――…………」 　暗い道を。 　少し前まで、絡まないようにしていた先輩と。 　 　――――……他の誰ともしない、こんな話をしながら。 　何でこんな風に歩いてるんだろうと。 　少し不思議に思う。