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第65話「対象外」

【side*奏斗】  四ノ宮はよく分かんない。  最初は裏は全部丸ごとブラックで、出したらもうすごいことになるのかな~と思ったけど。なんかそんな感じでもない。  別に素でも、優しかったり。面倒見良かったりも、する。  じゃあ何を隠してるんだろうって思うけど。  ……ほんと、何なんだろ。  ただ、オレが嫌いだった、嘘の作り笑いを、オレにしなくなって。  うさんくさいなーっていう、嫌な感覚を持たなくて済むから。  それは、オレにとっては良かったって話で。    でもたまになんか。ものすごく感じ悪い時もあるし。  すぐ怒る、ような気がするし。  半面。……多分、オレが、色んな奴と寝る事を良く思っていない。  なんか、ものすごく、心配、してる気がする。それは、優しいって事になるのかなあ。  そんでもってなんか――――……。  オレと、一緒に、居ようとしている……のかな。  よく分かんないけど。  月曜の、図書館も。今日のこの手伝いも。  明日の合コンも?  …………そんなような気がするんだけど。  気のせい、かなあ。  こんな事言って、違ったら、もう自意識過剰だと、この世の終わり位馬鹿にされそうな気がする。そういうとこは、ありそうだから聞けないけど。    一生懸命資料を読みながら、付箋を貼る時とか、資料を変える時とか。  ちょっとした隙間で、そんな事を考えながら。  はた、と気付いた。  あー、なんか、この空間って、四ノ宮も椿先生も。  めっちゃ女の子にモテそうな男が2人。  オレが女の子だったら、囲まれてすげー楽しいんだろうな。  …………あれ?  そっか、オレ男対象なんだった。忘れてた。  って、なんか、自分で変なこと考えてるなと思ったけれど、すぐに納得した。  ――――……昼間も、四ノ宮に、椿先生なんて近すぎて無理みたいな事言ったけど。    ここの2人、マジで近すぎて。  完全対象外なんだよな。  今なんてオレ、自分がこの2人を対象にするって事すらも忘れてた。  はは。オモシロ。  んでもって、女の子なら楽しいんだろうなあ、なんて。  咄嗟に思うとか。  よっぽど、身近で考えたくないんだな、オレ。  身近でそんな事して。  バレんの。――――……やだしな。  まあ四ノ宮にはもうバレてるけど。  こいつ、話しそうにはないし。ギリギリセーフ、だったて事かなあ……。 「――――……」  あと少しで、とりあえずここに積んであるのは見終わるな。 「先生、ここにあるのが終わったら、終わりですか?」  そう聞くと、PCに向かってた先生が、椅子を回して振り返った。 「ああ、終わりにしてもらっていいよ」 「分かりました」  返事をして、もう一度集中。  しばらく読んでいると、四ノ宮がふ、と息を付いて、顔を上げた。 「オレの方終わりました……」 「ん。オレのもこれで最後……」  四ノ宮の言葉にそう返して、読み進めていると。 「四ノ宮くん、こっちのpcの方に持ってきてくれる?」  先生がそう言って、四ノ宮が、オレと2人で積んでいた資料を運んでいく。  その後、自分の鞄を取ってきて、オレの目の前にまた腰かけた。  少し黙って、スマホを見てる雰囲気。  静かに待っていてくれてるので、何となく急いで読み通した。

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