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第80話「後悔」*奏斗

「なんか元気ない? 大丈夫?」  初対面の男が、オレを見て、そんな風に聞いてくる。    ……うう。  こんな初対面の人にまで分かる位、オレって今、落ち込んでるんだ。  と、思い知る。  ――――……やっぱり、さっきの、言わなきゃよかった。  ごめんって謝ったら、許してくれるかなあ……。  たださ。  ただ、やっぱり心配するにしてもさ。  もうちょっと違う感じで心配してくれないかなあ。  オレ、ほんとに、誰でもいいとか、そこまでじゃないのに……。  うーん……。  どう言えばあいつは納得してくれるんだろう。 「な、一緒に飲まない?」 「ぁ、でも……オレまだお酒飲めないから」 「そうなの? じゃあジュース奢るよ」 「でもまだこれ入ってるし。……ありがとう」  頭に四ノ宮とのさっきの事しかないし、今日はもう無理だ、と思って。  話しかけてくれるのを、やんわりと、断っているのだけど。  なかなか通じない。  ……この人は、ゲイなのかな。  ――――……誘い方がどっちなのか、よく分かんないけど。  そこに、もう1人現れた。 「何してんの?」  オレに話しかけてた人と、友達らしい。 「あーなんか、すっごく可愛い子見つけて、一緒に飲まないかなーって誘ったとこ」  そんな風に言う男に、もう1人が、オレを見て、にっこり笑う。 「おー、ほんとだ。モデルさんとか?」  さっきの店でも聞かれたなぁ、これ……。  ゲイとかじゃないのかな。オレの見た目を弄りに来ただけ?  オレは、違う、との意味を込めて、首を振った。 「ごめん、オレちょっとトイレ行きたくて……」  そう言いながらさりげなく、離れようとしたら。 「いいよ、行ってきなよ、終わったらちょっとでいいから話そうよ」 「――――……」  とうしようかな。うーん……。  ちょっと固まっていると。  1人が、飲み物を持ってた店員に話しかけた。 「ノンアルはある?」 「ジンジャーエールなら」 「飲める?」  そうオレに聞いてくる。 「――――……」  別にここでジュース飲む位、そんなに頑なに断らなくてもいいか。と思って。頷くと。 「3つ下さい」  そいつが支払いを済ませるとジンジャーエールが3つ、目の前のテーブルに置かれた。 「トイレ行ったら戻っておいでよ」 「……うん」  さっき自分で言った手前、仕方なく行きたくもないトイレに向かう。  ――――……ここ来て、誰ともそうならずに帰るって、初めてかも。  さっきの2人と話してた時、少し先に、前にホテルに行った奴が居て、一瞬目があった。  別に、そういう相手に、1回限りだと断ってる訳じゃないから、2度目を誘われる事も無くはないんだけど――――……。  今日はもう話すのも断るのも、面倒臭いな……。  ちょうどいいから、さっきのよくわかんない2人と少し話したら、店出よう。  四ノ宮に、電話しなきゃ。

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