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第81話「過去の人」*奏斗
一応トイレを済ませて、手を洗いながら、鏡の中の自分を眺める
――――……そんな見るからに、元気ないかなあ……?
普通の顔してると思ってたけど。
でも、2人に聞かれちゃったしな。
ため息を付きながらスマホを取り出すと、小太郎からのメッセージ。
「ユキ、急用って大丈夫? 何かあった?」
と入ってきてる。
「こっちは四ノ宮に無理無理2次会来てもらって、女の子達大喜びだけど。ユキが帰っちゃって残念がってる子も居るよ」
というメッセージと、笑ってる顔スタンプ。
「大丈夫、2次会行けなくてごめんって、皆に言っといて。ありがと、小太郎」
そう送って、ふ、と息をつく。
――――……四ノ宮、2次会って。小太郎が連れてったのかな。
……無理無理って。
苦笑いが浮かんでしまう。あいつ今日は合コン乗り気じゃなかったのにな。
ぼんやりと、四ノ宮の画面を見つめていると、トイレのドアが開いた。
何気なく鏡越しにそっちを見ると。
あ。さっきの……。
――――……前に関係して、さっき一瞬だけ目が合った人だった。
鏡越しに目が合ってしまって。すると。
「こんばんは」
にっこり笑まれてしまい、仕方なく後ろを向いた。
「あ。こんばんは……」
話さないで帰ろうと思ったんだけどな……。
この人、どんな人だっけ。しばらく前で、忘れちゃったけど。
――――……でも、明らかに変な人とはそもそもホテル行ってないから、大丈夫、かな……。
「ユキくん、だったよね?」
「あ。はい」
「僕の事、覚えてる?」
「あ、はい……」
……辛うじて顔は。
だけど。名前とかは全然覚えてない。
ルックスは悪くない、普通のリーマン……。
「そっか。良かった。――――……今夜、もう一度どうかなと思って?」
言いそうな気がしたから……目をすぐ逸らしたたんだよな……。
トイレついて来られちゃうとか……ちょっとあれだなぁ。
ため息を付きそうになりながら。
「今日、この後予定があって」
「そうなの? ――――……あの2人と?」
見られてる事と、それについて突っ込まれる事に、少し嫌な気がして。
「……さっき居た2人のことなら全然関係なくて。少し話したら帰ろうと思ってて……」
笑顔は敢えて作らずに、早口でそう言った。
「あの2人が相手じゃないなら……僕と行かない?」
「――――……」
――――……今、オレ、断ってるよな。どう考えても。
こういう人だっけ……?
「ユキくん、可愛かったから、もう一度会いたいなと思ってたんだよね」
「……でもすみません、今日は、ちょっと……」
ああ、なんか思い出してきた。
……連絡先、聞かれた人かもしれない。断ったと思うけど。
――――……トイレで2人きりって、ちょっとやだな……。
店の中なら、いざとなればリクさんとかも、居るんだけど……。
四ノ宮が居たら、バカって怒られそうだな。
――――……。
「……すみません、オレ――――……行きますね」
とりあえずここから出よう、と思った時。腕を掴まれた。
(2022/2/9)
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とりあえず他のも書きたいので、朝はここまで♡
また夜、続き更新します(^^)v
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