80 / 542

第81話「過去の人」*奏斗

 一応トイレを済ませて、手を洗いながら、鏡の中の自分を眺める  ――――……そんな見るからに、元気ないかなあ……?  普通の顔してると思ってたけど。  でも、2人に聞かれちゃったしな。    ため息を付きながらスマホを取り出すと、小太郎からのメッセージ。 「ユキ、急用って大丈夫? 何かあった?」  と入ってきてる。 「こっちは四ノ宮に無理無理2次会来てもらって、女の子達大喜びだけど。ユキが帰っちゃって残念がってる子も居るよ」  というメッセージと、笑ってる顔スタンプ。 「大丈夫、2次会行けなくてごめんって、皆に言っといて。ありがと、小太郎」  そう送って、ふ、と息をつく。  ――――……四ノ宮、2次会って。小太郎が連れてったのかな。  ……無理無理って。  苦笑いが浮かんでしまう。あいつ今日は合コン乗り気じゃなかったのにな。  ぼんやりと、四ノ宮の画面を見つめていると、トイレのドアが開いた。  何気なく鏡越しにそっちを見ると。  あ。さっきの……。  ――――……前に関係して、さっき一瞬だけ目が合った人だった。  鏡越しに目が合ってしまって。すると。 「こんばんは」  にっこり笑まれてしまい、仕方なく後ろを向いた。 「あ。こんばんは……」  話さないで帰ろうと思ったんだけどな……。  この人、どんな人だっけ。しばらく前で、忘れちゃったけど。  ――――……でも、明らかに変な人とはそもそもホテル行ってないから、大丈夫、かな……。 「ユキくん、だったよね?」 「あ。はい」 「僕の事、覚えてる?」 「あ、はい……」  ……辛うじて顔は。  だけど。名前とかは全然覚えてない。  ルックスは悪くない、普通のリーマン……。 「そっか。良かった。――――……今夜、もう一度どうかなと思って?」  言いそうな気がしたから……目をすぐ逸らしたたんだよな……。  トイレついて来られちゃうとか……ちょっとあれだなぁ。  ため息を付きそうになりながら。 「今日、この後予定があって」 「そうなの? ――――……あの2人と?」  見られてる事と、それについて突っ込まれる事に、少し嫌な気がして。 「……さっき居た2人のことなら全然関係なくて。少し話したら帰ろうと思ってて……」  笑顔は敢えて作らずに、早口でそう言った。 「あの2人が相手じゃないなら……僕と行かない?」 「――――……」  ――――……今、オレ、断ってるよな。どう考えても。  こういう人だっけ……? 「ユキくん、可愛かったから、もう一度会いたいなと思ってたんだよね」 「……でもすみません、今日は、ちょっと……」  ああ、なんか思い出してきた。  ……連絡先、聞かれた人かもしれない。断ったと思うけど。  ――――……トイレで2人きりって、ちょっとやだな……。  店の中なら、いざとなればリクさんとかも、居るんだけど……。  四ノ宮が居たら、バカって怒られそうだな。  ――――……。 「……すみません、オレ――――……行きますね」  とりあえずここから出よう、と思った時。腕を掴まれた。 (2022/2/9) ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ とりあえず他のも書きたいので、朝はここまで♡ また夜、続き更新します(^^)v

ともだちにシェアしよう!