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第94話「戻らない」*大翔

 抱くと言っても、男とのやり方なんて詳しくは知らない。  でも、性別は、関係ないはず。  感じる所探して、舐めて、噛んで、指で刺激して。  一番違うのは繋がる所。慣れてないならどうすべきか悩んだと思うけど。  この人の場合は慣れてるんだし、快感があるから相手を探してするんだろうから。とりあえず、解して、中で、どこが感じるのか、探せばいい。そう思った。  とりあえず、ホテルにあったローションとゴムだけ用意してから。  体中、隅々まで触れて、舐めて、感じる所を探した。  薬の影響もあるんだろうけど、めちゃくちゃ敏感で。  乳首、首、耳は特に。太腿なんかも、甘噛みすると、甘く鳴く。  どこもかしこも、感じるみたいで。 「……は――――……ン……」  キスが好きみたいで、顔を上げると、すぐ求めてくる。  一生懸命キスしてくる感じが――――……たまんなくて。  こんな風に、ずっと、抱かれてたのかと思うと。  ムカついて、しょうがない。  ローションをたっぷりつけた指は、容易く中に吸い込まれていく。  最初は恐る恐る、ゆっくりと探っていたけれど。 「……強く、して……?」  うわごとみたいに、喘ぐから。  指を増やして、奥まで慣らす。  いちいち、ムカつく。  ――――……オレがする事、全部気持ちよさそうに受け取るのが。  どんだけ、されてきたんだと思うと。  薬の影響はあったって。元々慣れてなきゃこんなんならねーだろ、と思うと。 「……あ、んん……っひ、ぁ…………っ」  どんなにしても、気持ちよさそうな喘ぎ。それが、腰に、響く。  ムカつく一方で、嫌という程、煽られる。  あーもう……無理――――……。  興奮しすぎて、痛い。  こんなの、久々……? ――――……初かも。  その相手が、男の先輩とか。マジで意味わかんねえ。 「……なあ」  顎を掴んで、まっすぐオレの方に向けさせる。 「入れていいの?」 「……ん……」  欲に濡れた瞳。顔は上気してて、息がやたら熱くて早くて、絶えず声が漏れてきてる。いつもの先輩からは、想像もできない位。 「……やらしすぎンだよ……」  ゴムをつけて、多分充分すぎるほどに、慣らしたそこにあてがう。 「――――……っふ……」  そのまま止まって――――……ほんの少しだけ、躊躇する。  せめて、もう少し、ちゃんと意識がある時に……と思うのだけれど。 「……ん…… はや、く――――……」  涙目が、細められて。オレの肩に先輩の熱い手がかかって、そこでしがみつくようにされて。 「――――……先輩。オレ、誰?」 「…………っ?」 「オレが誰か、言って」 「――――…………しのみや……」 「もっかい」 「しの、みや……」 「オレを見てて」 「――――……」  先輩の瞳と見つめ合ったまま。  慣らしたと言っても、狭いその中に、ゆっくりと。 「……っん、あ……」 「だめ。ちゃんとオレを見てろよ」  目をぎゅっとつむった先輩の顎を捕らえて、そう言って。  見つめ合ったまま、舌を絡める。  一度少し抜いてから。ゆっくりと、奥まで挿し入れた。 「……ン……あ……っ」  声――――…… エロイ。  つか。  ……可愛い。  甘えてる、みたいな。  言う事をちゃんと聞いて、目をつむらずに、必死で見上げてきてる。ゾク、としたものが、沸き起こる。   「――――……ッ……」    ――――……ヤバいなー、これ……。  ……ハマりそうで。  覚悟決めたと言ったって――――……少し、うんざりする。 「……ん、ンン……っ――――……」  瞳から涙があふれてくのを見て、たまらなくなる。  奥まで押し込んで。きつく抱きしめて、キスした。   「――――……ふ……?」  こんなにキスしたの初めてかもと思う位、キスを繰り返していたら。  少し、違う感じの声が漏れて。  先輩の顔を見つめた。 「――――……しの……みや?」 「……ん、そう」  まだぼんやりしてるけど。  すこし、まっすぐ、見られてるような気がする。  時計を見ると、もう4時間は確実に過ぎている。  そろそろ――――……戻るか?   完全に戻った時。  何て言うか知らねーけど。  もう、戻らねーから。 「――――……ん……っぅ……」  オレを見つめる先輩に、また深く、唇を重ねた。

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